鏡の部屋のアイサ 4
へそから肌に沿って這わせた指が、下腹部で何かの突起物に触れた。そこでまた知波アイサが、今度は少し艶っぽい吐息を吐き出す。
これは……
親指ほどの大きさだろうか。硬くなって突き出している。女性の持つ性器の一つにしては大きすぎるが……男性器にしては形状が違う。
これが、彼女の秘密なのだろうか?
自分の性器にコンプレックスを持っているのかと知波アイサに聞こうとしたが、その言葉を私が言い出す前に、知波アイサが私の手をさらに下へと導いた。
そして……導かれた私の手が、その奥で、もう一つの突起物に触れる。
なんだ、これは?
『突起物』というには大きすぎるものだった。思わず手で握ってみると、手のひらから少しはみ出るほどの長さで、太さは……握りしめるには太すぎる。
とそこで、知波アイサが快感とも苦痛とも取れる声を上げた。
「ごめん」
手を慌てて離そうとしたが、彼女がそれを許さない。自分の手で私の手を上から押さえつけた。指に、その突起物から分泌されたのであろう粘性の高い液体がまとわりつくのを感じる。そしてあの匂いが、更に強く私の鼻を刺激した。
このような場所に……女性にも男性にも、有るはずのないものが私の手の中に存在している。やや温もりを帯びたその突起物は、先端で中へと落ち窪んでいた……穴が開いているのだ。
見たい、という衝動を押さえることができず、思わず掛け布団を跳ね上げようとした。しかし、そんな私の行動を知波アイサが懇願めいた言葉で止める。
「だめ……まだ、見られたくないの」
ふと見ると、彼女の肩が小刻みに震えていた。顔をシーツに隠すように押し付けている。
「ね、先生も、アイサのこと『異常』だって思うでしょ?」
そしてぽつりとつぶやいた。
一体、この『物体』をどう考えたらいいのだろうか。異常な形状をした性器というのであれば、それは本来人間が持つ――女性であれ、男性であれ――ものの延長上にあるべきだ。しかし、私の手の中で確かな質感を持つこの物体は、その相同器官を推測することさえ難しい形状をしていた。
「そんなことは……」
気休めにしか聞こえない言葉が、空々しく空気を震わす。
「こんなアイサでも……先生は、守ってくれる? ずっと、ずっとアイサのことを守ってくれる?」
私に再びそう尋ねると、知波アイサはその筒状の器官を握っている私の手を、ゆっくりと彼女の束縛から解放した。
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