6月4日
昨日のあの瞬間から、ずっと夢の中にいるような浮遊感がする。今見上げている天井は、夢なのか、それとも現実なのか。熱に浮かされた頭じゃ、うまく判断できない。ぼんやりと天井を眺めていると、徐々に瞼が落ちてきて、光が消えた。暗闇の中に、あの瞬間が鮮やかに映し出される。
彼女に会いたい。
どんな名前をしているのかどんな声をしているのかどこに住んでいるのか誕生日はいつなのか血液型は何なのかいつもは何をして過ごすのか何が好きで何が嫌いなのか好きなタイプはどんな人なのかあの道に行けばまた会えるだろうか。
目を開き、体を起こす。
彼女に会いたい。
回らない頭のまま、僕は6畳の部屋を飛び出した。
*
外は霧雨が降っており、まるでレースのカーテンが掛かったように幻想的だった。天気の所為か人影が全く見えない。しばらく歩くと、ぼやける視界の中に鮮やかな空色が見えた。彼女が見つめていた紫陽花だ。急いで駆け寄ると、青空の中に一輪だけ恋する乙女の頬のように色づいた紫陽花が咲いていた。昨日見たときは空色一色だったのに、一夜のうちに一輪だけ変わるなんてことがあるのだろうか? 夢だから、こんなことが起こるのだろうか?
彼女に会いたい。彼女は今、どこにいるのだろう? この紫陽花を見たら、彼女はどんな表情をするのだろう?
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