第44話 結局のところ
『どっちでもいい』
「なんじゃこりゃあああぁぁぁ!」
クラス中の人間が落胆をした。
それと同時に安堵をする者もいた。
ここまで引っ張っておいて
クラスの会議はそのまま平行線の一途をたどったようにも見えたが、一人の提案で思わぬ決着を迎えた。
「じゃあ執事喫茶は?」
そのくらいであれば男子達も妥協をし、男装に普段から抵抗のない女子たちは快諾した。
このクラスの出し物は『執事喫茶』に決まった。
***************
それからというもの準備は順調に進んだ。
俺は普段から文化祭実行委員の雑務もある影響で、クラスに顔を出すことはあまりできなかったが、意外にもみんな仕事を真面目にこなす人物も多く、作る料理も多いわけではないがキッチン組が全員メニュー全てを作れるようになっていた。
パソコンか書類とにらめっこをする日々が過ぎ、気づいたら前日までになっていた。
「衣装は多めに用意して10人分まで用意をした。シフトは一日につき4つで分割をし、そのうち一人二つやってもらう。そして部活動や他の委員会の活動とかぶらないようにしてもらいたい。」
大輝が黒板に時間帯を書きながらみんなに伝えた。
文化祭は2日間行われ、一般の人々であふれかえることがあるため何があるかよくわからない。
生徒会長が言っていた通り、何よりも一般客に紛れたスパイ及びテロリストがいないとは言えない。
厳重な警備、荷物検査や金属探知機をしたところで最終的には自分の身は自分で守るか守ってくれる人間の傘に入ること、これが最も重要だろう。
「燕尾服か……レンタルの物ってことは汚したり破いたらまずいな……。」
有事のことを考えながら俺は最後の文化祭実行委員のほうへと向かっていた。
会議室には人がかなり多く、席もほとんど空いてなかった。
「今日までありがとう。もう少し頑張って、文化祭当日は自分が実行委員であることを心に深く刻み、楽しむときは楽しみ、すべきときにはする。けじめをつけて本校として風格ある立ち振る舞いよろしくお願いします。」
意外も意外、俺はその発言のほうを目を見開いてよく見た。
文化祭実行委員長、新井亜美がその言葉を口にしていたからであった。
しかし、彼女の仕事は確かに過酷なもであったのだろう、ゆえに俺はその彼女を見て心の中で労わずにはいられなかった。
深々と頭を下げる実行委員長に拍手を送るものや、頭を上げた委員長に、後ろから軽く肩をポンと叩き労う者などさまざまであった。
当日の行動確認をしたのち、早めの解散となった。
俺はそのまま自宅に帰ると直ぐにクローゼットの中から燕尾服を取り出し、急いで自分の鞄の中に入れた。
文化祭当日のことを考えてるうちに眠くなってしまい、食事もとらないままシャワーだけ浴びると倒れるようにベッドで寝た。
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