第43話 予知と暗示
「話が分かっているなら早くその紙を書いてくれ。」
「あら、久しぶりなんだしゆっくり話しましょうよ。」
「雑務だってそこまで暇じゃない、有志の団体の書類まとめ、食材を使うクラスの検便の申請だとか大変なんだよ。」
「雑務の仕事が女の子の記録を担当するのかしら?」
俺の胸ポケットに入っている携帯を見ながら彼女は自分の胸を腕で隠しながら軽く引いてみせた。
「ちげぇよ、大輝のやつに疑われるからだ。」
ってかこの映像後でクラスの前のやつらで見る羽目になったら俺間違いなく変な奴扱いだな。
普段は物静かなクールキャラで通してるし。
「それで?このクラスは何をやるのかしら?」
「自分でわかってるくせに。」
彼女は知らぬ存ぜぬ、といった様子をしていた。
斎藤優香、能力は『予知』だ。
だから俺がここに来るということもわかっていた。そしてこのクラスが何の出し物をするか、までわかっているはずだ。
「私の選択次第で未来が変更される場合は未来は出ないようになっているのよ。昔言わなかったかしら?」
「初耳だ。」
俺と彼女は昔からの付き合いである。
いわゆる幼馴染という奴だ、とは言っても腐れ縁に等しい。
俺も彼女もお互い興味がほとんどない、昔はよく遊んだ中であったが成長するにつれ俺もいろいろと予定があり外へ出かけることも多かった。俺は月に数回彼女の見舞いは行くようにはしていたが最近ではそれも1回ほどに減っていた。
「私から見れば文化祭なんてものはどうでもいいわ、寝る妨げにしかならないもの。でも……そうねぇ……。」
彼女は何か言おうとした後、軽く手を口に当てながらフフっと笑った。
何か未来で予知をしたのだろうが、口に出さない当たりどうやら教えてくれないようだ。
眉をひそめて軽く彼女のほうを見ると、紙にどちらの出し物をするか書きながら軽く髪を耳にかき上げた後、少し不可思議な質問をしてきた。
「文化祭の日、あなた学校にはいる予定?」
「当り前だ、実行委員だぞ。」
「そうね……近代兵器も侮れないわね。」
「?」
何を言っているのかは理解できなかったが俺はその内容をどうやら当日に知る羽目になるようであった。
彼女から紙を受け取ると直ぐに教室へ向かった。
クラスの空気は重たく、男子に至っては何やらブツブツとつぶやいているようであった。
「有紀!早く早く!」
教室のドアを開けガラガラという音を立てるとクラス中の視線が俺に集まった。
そこまでしてやりたくないやつならお互い違う案を出せばよいのに……。
そのまま俺は携帯のカメラの撮影中止ボタンを押すと、ポケットから紙を取り出し亜美へと渡した。
クラス全員が息をのみ見つめた。
ゆっくりと紙を開く音だけがクラスに響き渡る。
斎藤優香が選んだ選択は……
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