第41話 文化祭実行委員③
「今回の会議は顔合わせや、役員決めなどのためあまり長い時間拘束はしない。では……まず私から、生徒会長を務めさせている『
林生徒会長はそういうと、周りを居ぐるりと見まわしたのち、一礼をして着席をした。
軽く目が合ったような気がしたが、ただの思い過ごしだったようだ。
普通の髪形、そして黒く四角い縁の眼鏡、真面目だ。
そこからは生徒会副会長があいさつをし、役員を決める会議がスタートした。
とは言ってもほとんどは庶務であって、記録や会計は立候補する生徒が多かったので、俺は手をあげることもなく庶務に回った。
途中、亜美は会計に立候補したが、直ぐにうなだれて元の席に帰ってきたのを見るとどうやらジャンケンに負けたようだ。
しかし、一つどうしても決まらない役職がそこにはあった。
『文化祭実行委員長』
開会式や閉会式に全校生徒の前に立つのはどうやら皆躊躇した。
俺はその間どうすればいかに自分が委員長になる確率を下げられるか模索していたが、だれか代役を立てなければならない。
この空間には俺のほかに知り合いがいるわけでもないのでどうやらそれは無理そうだ。
またジャンケンか……いやな思い出しかないな。
自分が今この場にいる理由もジャンケンであると思うと気分が落ち込む。
「文化祭実行委員長がもしこのまま決まらないのであればこのままみなには残ってもらう。」
最悪だ、このパターンは何度か経験したことある。
誰か一人が立候補する、これはかなり難しいのである。
いっそのことジャンケンで決めよう、などといった公平・公正なものであれば負けても仕方ないのでやる、ということにできる。
しかし誰かが立候補しなければ終わらない、という話になるとみな自分とは関係がなくなるのでそっぽを向き、ただ時間が過ぎるのを待つ人がかなり増える。
「じゃあウチやります。2年生がやってはいけないというルールはありませんよね?」
「あ、あぁ。」
隣で大きく手をあげ、そのまま立ち上がる女子生徒がそこにはいた。
そう、クラスメイトの新井亜美であった。
会長は虚を突かれたような顔をしたが、直ぐに冷静さを取り戻し彼女に指示を出した。
そのまま彼女は会長のところへ生徒手帳をかざした。
すると前方のスクリーンには「文化祭実行委員委員長 新井亜美」と映し出されていた。
返ってくる彼女に俺は質問を投げかけた。
「どうして委員長をやろうと思ったんだ?」
たいていの人間はこういうだろう。
「誰も手をあげないならやるしかない、早く帰りたかったから。」
と、しかし彼女は違った。
「だってウチ偉い人には一度なってみたかったんだよねー。」
どうやら彼女は頭がよくはなかったようだ。
しかし、その思い切りの良さは彼女の長所である。
文化祭終了までこのまま思い切りの良さが売りのおもしろい委員長でいてほしいものだ。
会長からはある程度文化祭実行委員の仕事などが説明された。
文化祭はこの学院の能力をしようする、工業や農業の分野でアピールをする場面の一つでもあるかもしれない。
それ故に様々な事故が起こる可能性があるのでその危険因子を排除する、これを目的としていた。
海外からの見学、これだけならいいが最も厄介なものとして「拉致・誘拐」であった。
能力があるなら戦えばいいと考える者もいるかもしれないが、価値ある能力が必ずしも戦闘向きであるとは限らない。
小麦を永遠に生み出す能力があったとして、それでどう戦えばよいのか。
文化祭とは新たなる戦いの火種となりそうであった。
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