第40話 文化祭実行委員②

「んんん……とりゃっ!」


彼女は腑抜けたような声とともに、震えた手でグッと力を入れた。

すると、彼女の手には徐々に刀の形をした物体が現れ始めた。

徐々に形成されてゆき、完成すると柄が彼女の手に握られた。


「こんな感じ!どう?」


「マジか……。」


地味だとは程遠い。

たぶん彼女に備わっている英雄は鍛冶職人だろう。

それもただの無名の鍛冶職人ではない、日本では有名となった人物だ。

それほどの人物でなければ『鍛冶職人』というだけの人物が能力者に備わるほど実体に影響を及ぼすはずがない。

日本における有数な鍛冶職人ともなればかなりレアな能力ともなり研究対象として重きを置かれるだろう。


「亜美はクラスはなんだったんだ?」


「ウチはフェロだよ!まぁこんな能力だしね。」


彼女は軽く笑いながら自分の剣へと視線をずらした。

フェロだと?世界に珍しい戦わずに英雄となった能力者なのにか?


「能力の構造がすでに解明されている、ということか?」


「そそ、地中にある砂鉄を原料としてそれを化学反応させる、そして出来た鉄粉で構成させられたものがウチの刀ってわけ。砂鉄がここに来るのも能力発動時に体内から特殊な磁場を発生させるということもすでに確認されてるの。」


つまり、彼女は体の磁力で砂鉄を引き寄せてその砂鉄で刀を作っているということか。

確かに、ほとんどの現象が解明されてしまえば研究対象としての役割を終える。

だから彼女のクラスは低いのだろう。

戦闘能力ではなく、あくまで重要とされるのは研究としていかに有益な存在であるか、ということをよく表している事例だろう。


「で?あんたの能力はどんな能力なの?」


「あー、大したことない光るだけだ。」


騎士による威光

栞奈を助けるときに、瞬発的に発動させた。

これが俺に備わっている能力の一つであり嘘はついていない。


手を前に出し、軽く光らせた。

彼女はまぶしそうに目を細めながら、手で急いで顔を隠した。


まぶい!」


「いやまぶしいって言えよ。」


なんだ『まぶい』ってヤンキーか?お?お?コノヤロー

他に何も出てこなかったのでヤンキーの話を頭の中で折りたたむと、手の光を弱めた。


「ホwタwルw見wたwいw」


おい。

間違いではないから何とも言えない。

まぁ、ホタルでいいか。


「そろそろ会議始まるんじゃない?」


時計を確認すると時間も迫っていて残すこと後5分ほどとなっていた。

俺たちは軽く早足で会議室に向かった。




**********




会議室に入ると多くの生徒が会議室にいた。

クラスごとに2人とはいえ数えきれないほどの人数がいたのは間違いないだろう。

それだけこの学院の大きさを表しているのだろう。


「学生証をこの機械に当てて。」


眼鏡をかけた生徒が右手に機械を持ちながら俺たちを呼び掛けた。

その生徒の校章を見ると赤色だったので3年生であることが分かった。

学生証をタッチし、学籍番号が登録された。


「自由な席に座ってもらって構わない。」


俺は知り合いが多いわけではないので、この会議室に知り合いがいないことを確認すると、適当な席に腰を下ろした。

亜美はどうやら友達が多いらしく、色々な女子たちと和気あいあいとしていた。

会議が始まるとみんなに手を振りながらこちらに近づいて、俺の隣に座った。


「友達と一緒の席に座らなくていいのか?」


「ん?いつでも話せるしねー、それよりもアンタと文化祭について話した方がいいっしょ?」


どうやら彼女は思っていたよりずっとしっかりしている人物であった。

人望も厚く、その上仕事もこなせるときた。


「そうかい。」


俺は頬杖を突きながら前の黒板を見ると、先ほどの眼鏡の生徒がピンマイクで話し始めた。


「今から、第15回学院文化祭 実行委員会議をとり行う!」

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