第38話 library エピローグ②
それから俺は自分が今どうやって学校生活を過ごしているかなどを伝えた。
フェロは国に頼んだ偽の情報であったりということだ。
俺を『ジェマ』と記す決定的な証拠となるものは一つもない。
クラスチェックを俺から行えば良いだけなので極論俺が生きてさえいれば問題がないのである。
「他に何か聞きたいことはあるか?」
「えっと……多分ない……と、思います。」
「俺もないかな。」
ベンジャミンはこの後も研究が残っていたり事後処理が残っているので、俺は二人とともに帰っていった。
その帰り道で、三人は終始無言で大輝とイヴが足早に、俺はゆっくりと歩いていたため徐々に三人の距離は離れていった。
さようならも言わずに。
**************
次の日の昼であっただろうか。
俺と大輝は普段通りに過ごしていた。
他愛もない話、決して昨日のことは話そうともせずに。
昼間時、昼食を食べようとしていたらクラスメイトが教室のドアのあたりで固まって何かを眺めていた。
少し気になったのでクラスメイトに声をかけた。
「何やってるんだ?」
「あれ見ろよ、イヴ・オルコットさんが辺りを見てるぜ。」
よく見ると壁にもたれかかり、イヴが何度も首を振り、廊下を見まわしているのが分かった。
イヴは1年だからこの階に来るってことは上級生に何か用か?
心なしか顔は赤くなっており、待っている自分を他人に見られるのがあまり好きではなさそうであった。
「ん……。」
一言、そういうと俺の腕をつかみ無言で廊下を歩いていく。
後ろの方から「えええええええええええぇぇぇぇぇぇぇ!!」という大きな声が聞こえたが面倒なので後で誤解を解くことにした。
そのままずっと袖をつかんでいるので周りの視線がかなり痛い。
俺ではなくイヴのほうへ集中してるが、その後ろにいる俺が視界に入ると殺意が飛んでくるのが分かる。
もう一生イヴのほう見てろよ。
「な、なんだ?弁当教室なんだけど……。」
屋上まで連れてこられると、ようやく俺の袖を離した。
すると彼女は自分のバスケットを俺のほうへと押し付けてきた。
訳も分からないまま俺がその取っ手をつかむと彼女はうんうんというように頷きバスケットから手を離した。
「お礼……。」
「あぁなるほど、ありがとうな。」
俺がお礼を言い、軽く笑うと彼女はすぐにそっぽを向いてしまった。
すると、屋上にある手すりを掴みながら少し涙目になっているのが分かった。
「私……あなたのことを覚えてる……覚えてるけど夢のような感じがしているんです。まるで、書店での会話が、登校中の会話が、幻であったかのように……!私は……『
彼女は……4世代などというカテゴリに属していた。
無駄な記憶を省き戦闘の経験値を蓄積、そんなもので強くなれるなら俺がとうの昔に試している。
「俺が昨日助けた女の子は美しく輝く銀色の髪で、ショートヘアー。身長は高校生には低いほうで可愛らしさと美しさを持ち合わせていた子だった。」
「………。」
「そして自分の備わった英雄に対し真摯に向き合う。英雄の罪を自分の罪であるかのように背負い、どうにか変えたいと願うひたむきな女の子だった。学校では寡黙と言われていて不思議ちゃんと俺も最初は思った。でも、自分の好きな英雄の話となると饒舌になるオタクのような一面もあったかな?ハハハ……。」
「お、オタ……!」
「そんな女の子を助けた。あの出会った書店の日から助けた人は、助けたいと思った人はその娘だけだった。」
「……ハイ。」
「そんな変わった娘、一人しかいないだろうなぁ?」
「その一言は余計です。」
「ハハハ!でも、それが『君』なんじゃないのか?」
「………はい…!」
かすかに肩を震えさせながら屋上の手すりに掴むイヴ。
その後、すぐに制服の袖で涙をぬぐうと、くるりとこちらへとスカートをひらひらさせながら回転した。
「私、あなたを超えます。」
「へぇ?何を超えるんだ?」
「当然ながら能力としてです。それで………あなたを超えて、肩を並べるんです。アーサー王と。」
「そうか。じゃあ抜かされないよう俺も頑張らなきゃな!」
超えるなんておこがましいかもしれません。
私はアーサー王になりたかった。
その能力を持って周りの人を救いたかった。
でも、現実は冷たく、逆の試練を強いてくる。
それでも……今は私の英雄を少しでも好きになりたい。
ジェマとグラッツェの間にはとてつもなく大きな壁があることでしょう。
だから私は、超えなきゃ、あなたと肩を並べられないから……。
P.S.この手紙を
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