第37話 library エピローグ①

滴る汗は異常なほど冷たかった。

俺はその時怒りに任せて人を、元には戻せない状態にした。

自分の命がかかっている、こいつはイヴこの娘のことを傷つけた。

そんなものは言い訳に過ぎないのであろう。


「おわっ………たのか………?」


大輝は俺に対して目を向けながら確認するかのように聞いてきた。

気分はむしろ清々しかった。

むしろそれが俺の今の気持ち悪さを助長していたのだろう。


「あぁ……全部終わったよ……。」


気絶しているとはいえ、この状態で放っておけばいつか徹也は死ぬだろう。

そのことを考えても今この場で殺すべきではないと考え、俺はこいつを研究所にいる医務班へと直接渡した。

最初は俺の様子を見て驚いたものの、後ろから来るが言った一言で皆の者は急いで動き出した。


『あぁ、徹也そいつは実験に失敗したようだ。それで有紀こいつがここまで運んできてくれたらしい。後は頼んだ。俺はこいつから事情を聴くから。』


この男のおかげによって人払いもすみ、あとに残るのは俺、男、大輝とイヴとなった。

重苦しい空気のまま男は語り掛ける。


大輝とイヴふたりは初めましてかな、俺の名は『ベンジャミン・ピッツバーグ』アメリカ人なのにイギリス英雄の担当をしている奇妙な人間ってところだな。あー二人のことは知ってるから自己紹介はいらない。」


「お前こそどうして今日本にいるんだ……。」


最悪の気分だ。

どうしてこの男が今ここにいるのだろう。

アメリカの一流大学を出身とし、もともとは考古学を専攻していたが、そこで発現した能力者のことを聞きつけイギリスの歴史とつなぎ合わせるために今はこの研究所でイギリス英雄の能力について研究している。

そしてこの男は……


「つれないこと言うなよ、お前がこんな小さいときからお守りをしてやったの俺だぞ?」


「えっと……二人はどういう関係で……。」


イヴが珍しく言葉に詰まっている。

普段はもっと理解が早いがどうもこの状況は呑み込めないらしい。

当然と言えば当然だ。

先ほど戦うときに俺はようやく最後のジェマ自分の正体を明かしたのだ。

この状況でさらに俺のことを知る人物が現れたのだ。

頭の中がパンクしても不思議ではない。


「要は俺の研究者ってところだ。」


「そ!俺は『序列第7位(仮):椎名 有紀』の担当研究チームのリーダーだ。」


序列第7位(仮)ってもう少しマシな呼び方なかったのか……。

自分で隠してて思うことはたまに自分に着けられるコードネームやらが絶望的にセンスがないということ。

もう少し格好良くても良くない?


「えっと……では……いろいろと気になることがあるのですが……まず……本当に有紀さんが『最後のジェマ』でいいんですね?」


「そうだな。」


「で?その能力が『アーサー王』の能力で間違いないと?」


「そうだな……あれだったら今聖剣だけ出すことも可能だが。」


「え!あ!その!え!?」


珍しくテンパるイヴ、かわいい……。


「もう訳が分からない……。」


隣で大輝は頭を抱えてうずくまっていた。

申し訳ないことをしたなぁ。

今まで騙しててごめんね。なんて言える立場でもなくただ質問に答えるだけの俺であった。

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