第30話 答え合わせ ~時々コーヒー~

「ど、どうしてお前がそのことを知っているんだ!」


絶対に聞かれると思っていたがどうご誤魔化そうか……。

こいつ何も考えないで行動する癖あるよな。

仕方ない……ここは正直に言うか。


「あー……紙落ちてた時に拾ったんだよ。それで『解放運動に関する者 R953』って文を見た。それでその内容を解いたらここにたどり着いた。」


大輝はこの言葉を聞いたのち、驚いた。

開いた口が塞がらないとはまさにこのことを言うのだろうか。

大輝は3秒ほど固まったのち、腹を抱えて笑い出した。


「アハハハハハ!お前マジかよ!あの文を解いたのかよ!」


「な、なんだよ……笑うことないだろ。」


俺がふてくされて言うと大輝は笑いすぎて出てきた涙をぬぐいながら答えた。


「あぁ、確かにすげえよ。だってあんなの解けるわけねえもん。意味不明だろ『に関する者』を『——ary』と訳すなんてさ。」


確かに英語の文法としては意味不明だ。

『lib』はそれだけで『解放運動』という意味をなすが、『ary』という単語だけでは意味をなさない。暗号として不成立極まりない。


「じゃあお前はどうやってあの文を読み取ったんだよ。」


「読み取るしかなかったからだよ。何となくだな。」


天才肌かよ……。

正直まともに掛け合ってたのではたどり着けないであろう文だ。

俺だってあの英語教師の言葉がなかったらいまだに解けてはいなかっただろう。


「でも、勝手に見たことは許されるべき行為ではないぞ。もうやらないでくれよ?」


大輝は俺を諭すかのように言った。

同じ年齢だがこいつは俺よりも年上のように見える。

どうしてだかはわからないが、こいつなりに俺のことを思って言っているのだろう。


「わかったよ。でもこれで俺がだいたいのことは理解しているということはわかってくれたか?」


「あぁ、でも……『フェロ』のお前に何かできるのか?」


「ッ………!」


「あの文を解けたことは大したことだ。でもな、戦闘になってお前は何かをしてやることはできるのか?」


俺の戸籍上の設定がここで足にまとわりつく重荷となる。

『フェロ』なんて存在は『グレッツォ』や『ジェマ』からすれば名を聞くまでもない存在だ。

なら……もうこいつには話すしかないのか……。


「大輝……俺実は……」


携帯の音が鳴った。

その瞬間大輝は目を落とし、携帯の方へと向けた。

そしてどこからの電話か確認をすると片手を立てて、俺に軽く頭を下げながら席から離脱をした。

おおよその予想はついている、調査員だろう。

30秒ほど経ってから大輝は焦りながら帰ってきた。


「悪い、ちょっともう帰るわ!これで頼む、釣りはやるよ!」


財布から1000円札を取り出しテーブルのほうへ置くと大輝はいそいそと準備をした。


「あぁ、わかった。」


イヴの件で間違いはないだろうが、どのような事件が起こったかはまではわからなかった。

ならば俺のすることは一つに限られていた。

大輝を尾行してイギリスの目的を探る。そして『ジェマ開発プロジェクト』についての情報を得、計画を止めるか判断をする必要がある。

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