第24話 羨望のような嫉妬のような

「ってことがあったんだけどお前はどう思う?」


俺は後ろを振り向きながら大輝に向かい、今朝あったことを質問をする。

大輝は腕を組んで枕代わりにし、机に伏せたまま声のトーンを下げたまま話した。


「何が、お前が『図書館に佇む美女』と一緒にいたことの話か。くたばってほしいと思った。」


「いやそこじゃねえよ、ってか『図書館に佇む美女』ってなんだよ。レンブラントの作品名みたいだな。」


大輝は顔をあげると、俺のほうを見たまま一度か二度瞬きした。

そして俺を睨むかの用の声で再び話し出した。


「お、お前本当に知らないのか……イヴ・オルコットは図書館をよく利用するんだ。その姿はさながら絵画の様ということから『図書館に佇む美女』って絵画のようなあだ名がつけられたんだよ。もともと彼女がかなり寡黙であったということも絵画の様と言われる理由の一つだな。」


「説明ご苦労、別に彼女の名前くらいは聞いたことはある。」


1年にかなりかわいい生徒がいるなんて噂はクラスメイト達から良く聞いた。

しかし、その人物が誰なのかわかるわけもなく接点もないので記憶の中からほとんど消去をしていたというだけであった。


「絵画か……。」


ぼんやりと考えながら左にあった窓から外を眺めていた。

彼女の第一印象は確かに、まるで絵画のようだ、なんて思った。

しかし、彼女はしっかりと自分の尊敬しているものを持ち合わせており、好きなことであれば寡黙であるなんてことはない。

むしろよく話す女の子だとさえ思ってしまうほどである。


「彼女は何の英雄を持ち合わせているかわかるか?」


「円卓の騎士の誰かって話だぞ。誰かまでは確実性に欠けるから言えないな。」


「そこは能力でどうにかしてくれよ、名探偵。」


俺は大輝に手を合わせるかのようにし、そのが頭を下げた。

すると、大輝はため息をついたのち、やれやれといった様子で話し始めた。


「俺は推論や予想といったものはあまり好きじゃないんだ。ちなみに好きなのは事実、真実、証拠、根拠だな。」


「あっそ、ならいいや。円卓の騎士の誰かであるってことは事実でいいんだな?」


俺が再度確認をすると大輝は力強くうなづいた。

もし彼女が円卓の騎士であるのならばここまで彼女がアーサー王に固執する理由もわからなくもない。

英雄である円卓の騎士の精神と彼女のアーサー王への羨望や尊敬といったものが適合したのであろう。

円卓の騎士の中でアーサー王に親しかった人物か……パーシヴァル……ベディヴィア……ケイ……ガウェイン……ダメだ。

探そうと思えばいくらでも出てきてしまう。

この中から特定の一人を探し出すとなるとかなり苦しいものがあるな……。


「今日もどうせお前は一緒に帰れないんだろ?」


「あぁ、悪いな。」


「まぁ、能力ある人間が頑張るのはよいことだ、頑張れよ。」


「あぁ……。」


大輝の声は徐々に小さくなりつつあった。

俺は軽く手を振るとそのまま一つの部屋へまっすぐ進んでいった。

仮に『図書館に佇む美女』なんて人物がいるならばどうしてあの日、イギリスのジェマ襲撃の日は図書館にいなかったのだろうか。

あの日図書館にいたのは5人、そしてどの人物もイヴとは違う人物であることを覚えていた。

それとももともと放課後は図書館にいないのか?

それを確認するべく俺は図書館へ向かっていた。

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