第23話 英雄と王

次の日も大輝から一緒に学校にいけないとの連絡が入っていた。

どちらかというと俺が歩いているのと同じタイミングであいつが後ろからやってくるだけなんだけどな……。

そう思いつつも俺は大輝に「わかった」徒だけ連絡を入れておいた。

学校へ向かっているとき、見覚えのある後姿を見つけた。

日の光が銀の髪に反射をしてより一層美しさを際立てていた。

特に親しくもなく、話すこともないのでそのまま抜き去ろうとしたとき声をかけられた。


「あの……昨日はありがとうございました……。」


「あぁ、どういたしまして。本はどうだった?」


「とても、良かったです……。」


彼女の声は小さいながらもとても満足げな様子であった。

きっとヨーロッパの英雄に憧れでも抱いていたのだろう。


「そうか……えーっと……」


「『イヴ・オルコット』です。」


「あぁ、よろしくねイヴ。日本に来たのはいつ頃なの?」


かなり流暢な日本語だ。

幼少期から日本にいたのだろうか?

いや、留学生という可能性もある。

国が積極的にこの国へと留学生を受け入れているというのもあってこの学院には留学生が何十人もいる。

当然ながら厳正な審査を通過した者のみだが。


「いえ、私はハーフなだけで日本生まれ日本育ちです。」


「あぁ、そうなのか!」


納得がいった。

それにしても外国の人の遺伝を色濃く受け継いでるのがよくわかった。

瞳の色は宝石のような蒼色をし、髪も染めているわけではない。


「そういえば昨日聞いた時、ヨーロッパの英雄が好きだって言ってたけど誰が好きなんだ?」


「そうですね……いろいろと好きな英雄はいますけど特に『アーサー王』……ですね。」


ブリテンの危機を救った世界でもっとも有名な英雄を聞いた時、必ず一人は挙げるであろう伝説の英雄か。

いや、英雄などではないかもしれない。最後には息子のモルドレッドの反乱を止められず、最後にはモルドレッドと共に死ぬという悲劇の王でもある。

危機を救った英雄であると同時に、破滅へと導いた愚者でもある。


「そうか……。イヴはアーサー王に憧れているか?」


「はい、ですがきっと『アーサー王』にふさわしい器はジェマの人々でしょう。」


彼女は視線を落としながら少し足早に進んだ。


「イヴは……イヴがそこまで『アーサー王』を尊敬している理由を教えてもらってもいいか?」


「それは……言えません……。すみません授業に遅れてしまうのでお先に失礼いたします。」


彼女は昨日と同じように一礼をすると小走りで学校のほうへと向かっていった。

いや、俺も一時限目あるんだけど……。

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