第22話 書店にて
「そ……そんなことはあり得ません!絶対に絶対にぜーったいに!」
彼女は全力で首を振りながら俺の考えを否定してきた。
「どうししてだ?」
「んむぅ……どうしてかはわかりません、ですがそのようなことは絶対にしないはずなんです!」
どうにも彼女の言っていることは理解しがたかったが、ここまで否定されると穴があるんではないかと自分の考えを再確認したくなった。
「そうだな……まぁそんなこと国がやっていないんだったら、それはそれで助かる。貴重なグレッツォをこのようなことで失ってほしくはないからな。」
「そうですね……あくまでこの話は噂ですし!」
俺はその後、栞奈との話を終え、別れると家路へと向かった。
いや、厳密には本屋で少し探していた本を見つけたため購入をした。
その本屋では不思議な女の子がいた。
この学院では学年ごとに制服に取り付ける校章の色が指定されていた。
1年生は緑、2年生は青、3年生は赤といったように。
俺や大輝、栞奈についている校章の色は青なので2年生だ。
「あれが欲しいのか?」
彼女はどうにか背伸びをして本を取ろうとしていた。
書店にあった脚立は奥のほうで違う人が使っていたため彼女は使うことが出来なかったようだ。
俺はそのまま本に手をかけ、取り出した。
『筋肉は裏切らない!あなたも今日からボディビルダー!』
えー……何これ……。
俺は軽く引きかけたが人の趣味にとやかく言うつもりはなく、彼女はこれが欲しかったのだろうと思い彼女に手渡しをした。
「何……これ。」
彼女は真顔で俺のほうを見つめながら、この本と俺の顔で、視線を往復させていた。
「え、これが欲しかったんじゃないのか?」
「その隣……。」
「あぁ!悪い悪い!てっきりこっちかと……」
寡黙な少女はその本の隣にあったものが欲しかったらしい。
俺はその隣にあったものを取り出して彼女へと渡そうとした。
しかしその本の表紙にあったものを見て、少し心がざわついた。
『紀元前から現代までのにおけるヨーロッパの英雄』
アーサー王やユリウス・カエサル、アレクサンドロス大王やヘクトールが表紙を飾っていた。
俺が立ち止まりその本の表紙を見ていると彼女は俺の顔を覗き込みながら質問をしてきた。
「どうかしたのですか?あなたもその本が欲しくなったとか……?」
「あぁ、いや……そういうわけではないよ!ごめんねボーっとしていたよ。はい、これでしょ?」
「ありがとうございます。」
「ヨーロッパの英雄、好きなの?」
「はい、好きなだけです……好きな……だけ……。では、私はこれで……。」
彼女は一礼をすると会計のほうへと並びに行った。
俺はすでに会計は済ませてあるのでそのまま店を後にした。
不思議な女の子であったといえば間違いない。
美しく輝く銀色の髪で、ショートヘアー。身長は高校生には低いほうで可愛らしさと美しさを持ち合わせていた子、という感じだ。
寡黙で知的なイメージがある、といったところだろうか。
学院でもかなり有名になるくらいに綺麗な子であることは間違いなかった。
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