第14話 破壊の狼煙
「『最後のジェマ』のクラスチェックを書き換えればよいのだ。」
「し、しかしクラスチェックの担当となる人間は研究員の中から無作為に選ばれた人間だぞ!」
「そいつの口封じの方法などたやすいではないか。研究の第一線においてやるとか、お前には良い研究室へ斡旋してやる、などと調子のよいことを言っておけばよい。あとは金や殺害でも口封じはできるな。」
ほぼ正解だ。
やはり犯罪に関係することとなるとかなりの嗅覚を持ち合わせているようだな。
『ジェームズ・モリアーティ』
シャーロックホームズに登場する最強の敵であり、ライバルである。
物語の最後には『ライヘンバッハの滝』でホームズと戦い、一緒に投身したが、読者の要望がかなり多かったためコナン・ドイルは仕方なくホームズは生きていた、ということにした。
後は俺の正体がバレるのは時間の問題か……。
どうにかこの男をけん制して今回の調査を諦めさせなければならない。
俺はとりあえずこの調査員にいろいろと質問をぶつけてどこかに穴がないかと探った。
「だがしかしどうやってそれを調べるのだ?
「少しは貴様は頭が回るようだな。貴様には特別に名乗ってやろう。私の名は『バリー・ローラン』覚えておきたまえ。そしてその質問に答えてやる、今日この国にいるジェマは『最後のジェマ』しかいない。ならばその間に情報を盗みとってしまえばよい。」
「な!お前自分で何を言っているのかわかっているのか!?」
つい大輝は大きな声を出してしまったため周りに内容が聞かれそうになってしまった。
しかしバリーの周りにいた黒いスーツのボディーガードらしきものたちが周りの生徒たちを廊下へと追いやった。
そこからは俺たちはなるべく聞かれないよう小さな声で話し始めた。
「国家間での対立だぞ……。それに俺のようにグラッツェはいくらでもいる。お前ごときに落とされるような国ではない。」
「あぁ、確かにそうだな、でも『グラッツェ』と『ジェマ』の力量関係を知らないわけではないよな?」
「まさか……いやしかし『ジェマ』の人間は性格が著しく歪んでるやつしかいないはずだが……。」
「協力をしてもらったのだよ、その歪んでるやつにな。」
次の瞬間、轟音とともに風が窓ガラスを激しく揺さぶるような音がした。
あっけにとらわれた俺と大輝は窓から身を乗り出して音の方向を見ると黒い煙が昇っているのが見えた。
「あっちはフランス英雄の研究所のほうだ……!」
「聞いた情報によると西洋の甲冑を身に纏っていたらしいな。ならばフランス、イギリス、イタリアのどれかであろう。一つずつ調べさせてもらう。」
「このことを俺たちが国に告発をすればお前たちはただでは済まないぞ!」
「『証拠が残れば』の話だがな。」
激昂しながら今にも襲い掛かろうとする大輝に対して冷静に返すバリー。
どういうことだ……爆弾などどう考えても周りに知らせているように見える。
それどころか爆薬などの証拠が絶対に残ってしまう。
プラスチック爆弾を使えばもし破片でも残れば指紋が検出されかねない。
証拠が残らない……ならば完璧に消えるもの……能力による爆破か!
「悪い大輝先に行く!」
「フェロのお前が何をやっても無駄だ!」
俺を制止する大輝を振り切って、3階の窓から飛び降りてそのまま着地をしたのち研究所へとまっすぐに向かっていった。
仮に今研究所にいるのがジェマであるならば被害はこれだけにとどまらない可能性もある。
急がなくては……。
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