第13話 能力者の差

「なるべくお前とは一緒にいたくないから要件を早く言ってくれ。」


「なるべく俺は人に話を聞かれるのは好きではないのだ。特にそこの君とかね。」


俺に指をさしながら軽蔑するかのようにその調査員は言った。

わざと俺が聞こえるように。


「こいつは俺の大切な友達で信頼もできる。こいつが居てはならない要件などはなっから俺は首を突っ込むつもりはない、この話はなかったことにしてくれ。」


「へぇ、随分と君は信頼されているそうだね。君は彼とどういうつながりがあるんだね?クラスか?それとも君もシャーロックホームズにゆかりのある……そうか!ワトソンか!それともレストレードかね!」


調査員は俺に興味を示し、少しずつ距離を縮めながら話しかけてきた。


「クラスはフェロ、英雄は大したことないな。俺は大輝こいつと中学から一緒だからだ。」


調査員は顔をゆがませながら俺のことを睨んだ。


「フェロだと!?そんなレベルの人間に俺が今回のことを説明しなくてはならないのか!」


別にクラスによって知能の差が生じるわけではない。当然ながら知性の高い英雄と適合した人間はもともとひらめきの力が強かったり柔軟な思考を持ち合わせている人間だ。

しかし、この調査員のように自分より格の下の人間をさあげ住む傾向がなくはない。

大多数がフェロやピエトラだからあまり表に出てはいないが大輝のように誰とでも分け隔てなく接する人間はあまりいない。


「俺はそういう能力で人間の限度を決める奴は嫌いなんだ。わかったら今すぐ話すか、帰るか決めろ。」


調査員はどうにか声を絞り出すと、しぶしぶ話し出した。


「んむぅ………体育館の調査と、この学校の生徒の能力の再確認だな」


「体育館の調査はわかるとして『生徒の能力の再確認』ってどういうことだ?」


大輝が話を遮るかのように調査員に対して質問をした。

確かに、クラスチェックによって完璧に分けられた人間をどうしてこのイギリスの人間がもう一度確認をするのだろうか。


「なにせこの学院に『最後のジェマ』がいるんだからな。」


「は?どういうことだ?」


「この学院はこの国に一つしかない能力者のための唯一の学校だそうだな?」


「あぁ、そうだな。中等部や初等部も合わせれば生徒数はゆうに1万をも超える。」


「では『最後のジェマ』が居ないはずなどないのではないか?」


「いやジェマクラスの人間はこの学院にほとんどいないし、『最後のジェマ』は国が匿っている可能性だってあるだろ。」


「ま、この学校にあれこれ言っても仕方はないのだろうがどうしてクラスごとに学校を分けないのだろうかことごとく不思議に思うがね。」


周りを見渡した後、俺のとこれで視線を止めそして少し鼻で笑いながら嘲笑するかのように言った。

本当に鼻につく野郎だな。

大輝は生理的に無理ではなくシンプルにこいつの性格が無理だったのではないだろうかとさえ思ってしまうほどだ。

こいつの天狗の鼻っ柱を折れば静かになるかな?


「俺はクラスごとに分けなかったおかげで有紀こいつと知り合えたんだ。それのおかげで得た新たな発見だってある。お前の国のように使えない人材はバッサリと切り捨てるようなことはしない国に生まれてよかったと思っている。」


「ハッ!どうだかな。まぁいい、そして問題はこの学院に入るには当然ながらというわけだ。」


「当り前だ、言い方は悪いがこの国の財産であり資源であり科学技術の最先端でもあるからな。何が言いたいんだ?」


「そう、ではどうやって『最後のジェマ』はこの学院に?警備員がその侵入者を『最後のジェマ』だとわからないのにどうして入れるだろうか?いや、入れない。ならば答えは一つであろう。」


「いやしかし!この学院に在籍している生徒はみなクラスチェックを行ってだな……!」


「こういう時に『国が匿っている』可能性は考えなかったのか?」

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