第15話 イギリスのジェマ①

それに、あいつらが来る前に片づけておかなくては俺のことが見つかれば詮索されかねない。

すぐにあのバリーとかいう奴は俺のことを追いかけに来るだろう。


「能力による爆弾を使える人間がいたか?」


爆弾と言えばかなり近代的なものだ。

それにジェマとなれば世界的に有名な研究者……ノーベルかアインシュタインあたりか?

どちらにしろ戦いは苦手なはずだ、急いでいけば被害は抑えてかつ情報を奪われずに済むだろう。


「研究所か……あまり行きたくはないな……。」


上の窓から俺を見下ろす大人たち。

そして俺の周りには何もない。

ただ、あの部屋で俺に能力を使うことだけを考えさせた。

研究のために無心で能力を使わされた。

『感情』というものがなかったわけではない。

早く研究所を出られたため、俺の心の傷は浅く済んだ。

ただ、毎日『感情』というものを使わなければ人間というものは使い方を忘れてしまうのだろう。


「あそこか……」


考え事をしていると鼻にむせ返るような嫌な匂いがしたため顔を見上げると黒い煙がすぐ前方にあるのがわかった。

しかし、俺はその建物をよく見るとある違和感があることに気づいた。

煙は確かに出ている。

それにこののどが焼けるようなにおいも煙だろう。


「火が……出てない……?」


『火のないところに煙は立たない』この言葉を根底から覆すような事態がそこにはあった。

とりあえず中に人がいないか、そして自分の正体がばれるわけにもいかないので、中に入ると誰も見てないことを確認して急いで能力を使用した。


「さてと、能力者の情報を漁っているとなれば、あの場所かな?どこにあるかは知らないけどな……。」


研究所の中はかなり入り組んでおり、能力者の能力向上を目的としたトレーニングルームのような場所から、詳しい研究をするため厳重にロックされているための部屋などかなり充実した設備となっている。

全ての研究所の設備は同じとは言え、構造がまばらなためそれぞれ特徴が出ていてかなり探すのが大変なのである。


「ここかな?」


一つ一つ部屋をしらみつぶしに探しているうち、一つの隠れた部屋なるものを見つけた。

しかし明らかにほかの部屋とは違った。

地図にも載っていない。

左右の壁と壁の距離の間に謎の空間があった。

しかしその空間は普通にはわからず、ただの白い壁があるだけの存在であった。


「時間もないし悪いな、また立て直してくれ。」


俺は思い切りその壁を蹴破ると思ったとおり、そこには地下へと続く階段があった。

中へ進む道は真っ暗で壁伝いに進まないと自分が今どこにいるのかすらわからなくなりそうだった。

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