第11話 国と雲行き
「それに、今日の日程見たか?」
「何かあったか?今日の日課は……体育があるな。それ以外は普通の日課だな。」
体にある程度の負担をかける筋トレ、自分の精神面を鍛えるという意味でも嫌いというよりはむしろ好きな部類だ。
しかし、最近やっているのはサッカーだ。
俺はサッカーが昔からかなり苦手で足でボールを扱うということがいまいちなれていないためでもあるだろう。
それ故に今日の体育は憂鬱でしかなかった。
「ちげえよ……今日……わざわざ海外の学院から視察に来るんだってよ……。」
「どこに?」
「ここに。」
「そりゃまたどうして?」
「ドラゴン襲撃の件だよ。」
なるほど、それなら確かに海外から派遣される理由もわかる。
それにこのドラゴンを生み出す謎を解明できれば恐竜の再現なども夢ではない。
考古学の発展に一役買えるな。
そして幻覚も現在のVR技術の発展にも役に立てるであろう。
これがもし解明できればの話だが。
「あれは西条先輩が起こした問題だろ。」
「だからこそだろう。何処から嗅ぎつけたのかは知らないけど彼女の情報を余すことなく国に持ち帰るためだろうな。」
ドラゴンは国が責任をもってひとつのこらず証拠を回収していったはずだが……
なんか雲行きが怪しくなってきたな……。
国が彼女を扱いきれなくなって他国に情報を売ったのか?
「どこの国から来るんだ?」
「……ス……。」
小さく行ったので何と言ったのか聞き取れなかった。
それにいつもうるさい大輝がここまでしおらしくなるとはよほどのことがない限り無理だろう。
「え?なんて言った?」
「……リス……イギリス……グレートブリテン及び北アイルランド連合王国……。」
「あー……そういうことか……。」
イギリスと言えばシャーロックホームズの生誕地だ。
それ故に熱狂的なファンもいる。
「何故イギリスではないのだ!」「どうしてシャーロックホームズがアジア人なのだ!」なんて言われる可能性もあるのだろう。
「別にお前のことを言っているわけではないんだし元気出せよ!な?」
「いや……『ジャーロックホームズの脳がどうなっているのか知りたいから解剖させてくれ!』なんて言われてみろ。冗談でも鳥肌ものだぞ……。」
あぁ……確かに熱狂的なファンだなそれは。
熱狂的っていうか狂的のほうが正しいけど。
愚痴をこぼしながら大輝は次の授業の準備を進めた。
「大体『バリツ』ってなんだよ……俺合気道しかやったことねえよ。」
「ま、フェロの俺には関係ないしな。」
「どうだか、案外お前が『最後のジェマ』なーんてこともあるかもしれないけどな。」
「んなわけねーだろ。何のためのクラスチェックだと何回言わせるんだよ。」
「ニシシ、サーセン。」
正直今一瞬ドキッとしたがどうしか平静を保ちつつ否定することが出来た。
めちゃくちゃ鋭いなこいつ……。
俺は情報の隠蔽及び捏造をしている。
住民票などを書き換えたりしたら当然ながら重罪である。
しかし国が人権のことを考えた時にこちらを優先してくれたのだ。
だから俺の戸籍上でのクラスは『フェロ』ということになっている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます