第2話 ドラゴン

首から腕を離すと大輝はせ咳き込むように呼吸を整えようとした。


「ハァ……ハァ……お前は……ハァ……俺を……殺す気か?」


「わりぃわりぃ手が滑った。」


「本当に不幸になればいいのに……。」


「まぁ杞憂だろ。現に俺なんかに不幸が訪れるとしても犬の糞を踏むとかそのあたりだとかなり助かる。」


「それはかなり不幸なのではないか?まぁ今回の話を聞くのとは全く関係ないんじゃね?」


「だといいけどな……。」



*****



俺たちが体育館に来ると教師一同が体育館に集まっていた。

かなり大きな事件でもあったのだろうか?

教師たちは周りをきょろきょろしながら誰かを探しているようだ。

『最後のジェマ』が誰だったのか見つかったのだろうか?


「いや、縁起でもないこと言うもんではないな……。」


「あ?なんだ?」


「何でもねーよ。先生が話始めるから黙って聞いとけ。」


「はいよ。」


大輝が前を向くと、一人の老人らしき教師が話始めた。

年齢からして学年主任か教頭、校長だろうか?


「本日は皆さんに重大なお知らせが……よりあるそうです。」


『ある人?』気になる言い方だな。

別にこれから話し始めるんであれば今この場でその人物の名前を話しても良いのではないだろうか?


「よろしくお願いします。」


老教師の声に合わせて一人の女学生が壇上に登ってきた。

その姿を見た瞬間周りでざわめきや動揺が起こった。

俺も驚いた人々中の一人である。

なぜなら壇上に出てきた人物は……



「1年生の皆さんこんにちは!『西条 あやめ』です!」



ジェマ:序列第5位 『西条 あやめ』


「おいおいおいおい……マジかよ……!見ろよ有紀!西条先輩だぞ!」


「あ、あぁ……。」


大輝が興奮しながら俺のほうへ振り返ってくる。

確かに仕方がない。

ジェマとは研究においてかなり重要な役なのである。

希少的能力と希少価値のある英雄、そしてその英雄に見合った知性と教養を兼ね備えたいわば



『最強』



この言葉で片付いてしまうほどだ。

しかしジェマである彼女らは普段から表に姿を見せることはなく、同学年の人間ですら見たことのあるという人は半分いれば多いくらいである。

ましてや1年生が会うことなど0に等しい。


「どうしてこの場に……?」


大輝がつぶやくと西条先輩は大輝のほうを指さしながら質問を投げかけた。


「お、そこの君いい質問だねー。私はある目的があってここにいます。それは何でしょーか?」


「いや……あまりわかりません……。」


「『あまり』って何よ!アハハハハハ!少しはわかってるみたいな口ぶりよ?それ。」


「あ、すみません……。」


ジェマ相手に大輝は委縮してしまった。

普段ならもうちょいましな返し方が思いつくのだろうけどこの状況では頭が全く回転していないようだ。


「じゃあ彼の後ろの君、わかる?」


俺は自分の顔を指さして「自分のこと?」かのように聞くと西条先輩は数回うなずいた。


「わかりません。」


「へぇ。」


目つきが一瞬変わった。

周りにはバレない様にしていたのだろうが一瞬だけ殺気が込められていたのが分かった。

殺気に反応したやつを片っ端から尋問でもしていくのか?


「まぁ知らないならいいや。じゃあもう誰なのかわからないし、無理やり化けの皮はがすしかないか!」


西条先輩は壇上から降りると指パッチンをした。

それと同時に体育館全体の扉が占められ、固く閉ざされた。

すると体育館は地鳴りが発生した。


「な……なんだ!?地震か!?」


「いや違う!下だ!」


地鳴りとともに地面から巨大なドラゴンが出てきた。

ドラゴンは羽をはばたかせると体育館の天井を突き破った。

その後、空で一回転をし、体勢を立て直すとゆっくりと体育館の崩落している地面に着地した。


「さーてと……最後のジェマは『竜殺しドラゴンスレイヤー』かな?違ったらどうしようかはまだ考えてないけどね♪」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る