英雄を作るための英雄譚

カル

第1話 能力

「お、お、お前もしかして……『$%&’(’&%』だったのか!?」


「あんまりこれバレたくなかったんだよなぁ……。」


「だったら……どうして……!?」


「んなもん決まってんだろ」





「俺がやらなきゃ誰がやる」





******************


今日の朝は天気も良く気分も爽快であった。

一つ、気になる点があるとすれば少し日差しが強かったということだろうか。

俺、『椎名しいな 有紀ゆうき』は黒髪のため日差しの影響をモロに受けていた。学校以外では外に出ない俺からしてみればかなりの苦痛であった。

目は軽く釣り目のため目つきが悪いと言われるが今日の晴天には太陽を睨みつけていたためより一層目つきの悪い人間に見られただろう。

朝、学校に向かい歩いていると後ろのほうから大きなドタバタという足音とともに俺の背中を思いっきり叩いてくる奴がいた。


「よっ!有紀!今朝のニュース見たかよ!」


「あ?ニュース?芸能人の不倫か?」


「ちげーよ!見ろよこれ……『最後のジェマ』を自称していた男が捕まったらしいぜ!」


およそ20年ほど前から人間に特異な能力が発現し始めた。

能力は人それぞれで、飛躍的な身体能力や魔法といった現代ではありえないものだ。そして能力を発現した者たちはみな、自分が何者になったかを自称し始めた。

その名乗るものはみな過去に英雄や偉人として、もてはやされたものばかりであった。

ありえない話のようだが自分のことを「俺の名は織田信長だ!」と言い始めたようなものだ。

しかし奇怪なことに、その能力者たちはみな自称する英雄に関係のある能力を持ち始めたのだ。

そこで政府は地方に散らばっている特異な能力を持った者たちを一つの学校に留めることによって研究利用しようとした。

その学校こそが俺の通ってる学校『国立シャロンド学院』だ。


「大体『最後のジェマ』って本当にいるのか?」


政府は人間の能力を希少度やらその史実に基づく優位性によって生徒たちをクラスチェックを行った。

上から順に

『ジェマ』

『グレッツォ』

『レプリカ』

『フェロ』

『ピエトラ』

そして『ジェマ』は国一つに匹敵するレベルの強さを持った者達であった。


「さぁな。だからこそみんな希望を抱いているんだろ?『もしかしたら俺が最後のジェマかもしれない……!』ってさ。」


「何のためのクラスチェックだよ……。」


『ジェマ』にいる者たちは日本には7人いるとされている。

なぜ『されている』かというとここで出てくるのが『最後のジェマ』だ。

日本にいるジェマは公表するか、しないか、それぞれ自分で選択することが出来る。

国が施してくれた唯一の救済措置と言っていいだろう。

『最後のジェマ』は一つとして個人情報を漏らすことは良しとしなかったため謎の人物として扱われている。

最強の力を持っていればバレるのは時間の問題だが、最後のジェマは10年間一度として情報が公に出ることはなかった。


「もしかしたら……俺かもしれないんだぜ?今のうちに俺に媚を売っておかなくていいのか~?」


「あーはいはい、流石っス。マジ尊敬してるっス。これでいいか?」


「雑すぎだろ。もう少し俺に構ってくれても良いだろー?」


「う、鬱陶しい……。」


この面倒くさいのが『山崎 大輝』

俺の中学からの数少ない友人の一人だ。

いや友人じゃないな。

先のように面倒くさい性格をしている、そのくせ顔は好青年のためムカつく。

茶髪で短く整えられた髪、そして凛々しい眉、スポーツマンらしい見た目であった。


「あ!話変わるけど次の能力開発者どうなるんだろうな?」


「本当に変わるな……それで、つまり?」


「人工的にジェマを作り出す研究だよ。」


「どうせレプリカ止まりだろ。」


「そろそろグラッツェ超える逸材ほしいよな。」


国はこの学校をもとにして新たな英雄を作り出すことを目標としていた。

しかし英雄にも当然限りがある。

すべての英雄が出尽くしたらどうなるのかまだわかっていない。

フェロやピエトラランクの生徒は無名の足軽などを身に宿している。

だからこそ『ジェマ』という存在は世界そのものを変えかねない存在なのである。


「今日も一日授業頑張るかぁ。」


「頑張れよ、俺は寝る。」


大輝はいそいそと授業の準備だけをすると、携帯で時刻を確認したのち机に伏せた。

毎日寝ていても、大輝はテストの成績は上位常連であった。


「もう少しお前はまじめにやる癖をつけろよ……。」


俺は寝る準備をする大輝をしり目に授業の準備をし始めるのであった。


***********



「あー……悪いが本日のLHRロングホームルームはある人物の話を聞くことになっている。体育館まで移動してくれ。」


「話?」


担任に言われるまま、俺たちはぼちぼちと体育館に向けて移動し始めた。

手を頭の後ろで組みながら大輝が俺に質問をしてきた。


「今日の話って誰の話なんだろうな?」


「さぁな……でもなんか嫌な予感がするな……。」


「ハハハ、なんだそれ?でもお前の予感は何か当たりそうだな!で?どうなりそうなんだ?」


「俺に関係のある嫌なことかもしれない……。」


「マジかよ!そりゃ最高!もっと起こらねえk……ギブギブギブ!チョークスリーパーするな!」

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