八 難題
「──さて、もう片方の忌み児こと鬼の児にはどんなろくでもない逸話があるんだ?」
「ろくでもない、というよりは因果応報の部類ですかねぇ。少なくとも村が一つ滅んでますし」
「……どういうことだ?」
「昔話を読めば分かります」
「おい」
「事細かに話すとそれこそ日が暮れますよ?」
「……なら良い」
照島さんと違って享伍さんはすぐ引き下がってくれるから本当にありがたい。
「とりあえず鬼の児についてざっくり説明すると鏡鬼が死に際に残した呪いであり、鏡鬼の生まれ変わりに当たる存在ってとこですかね」
「その鏡鬼とやらは自然発生した怪異か?それとも人間由来のものか?」
「後者ですね。理不尽に殺された娘の恨みが鏡鬼を生み出したらしいんで」
「……ありふれた話だな」
「鏡鬼の場合は生まれ変わりを残したり自分を退治した霊能者の一族を蝕む呪いをかけたりしてるんでその手合いの中では大分強い部類になりますかね」
「随分持ち上げるな」
「俺が知る限りトップクラスですよ、鏡鬼の強さは」
「もしかして暗条くんに憑いている伝染し鏡の怪異よりも強いのかしら」
「うーん……ん?」
何か今、妙な方向から後呂江さんの声がしなかったような。
「どこを見ているんだお前は」
「あ、照島さんも後呂江さんもそっちでしたか」
「……珍しい組み合わせだな」
「今回は照島くんの最終試験だったから暗条くんより私の方が適任だったのよ」
「結果はどうでした?」
「うーん……ギリギリ合格点、かしらね。一人で行かせるのはまだ不安かも」
「じゃあもう暫くは今まで通り、ですかね」
「不本意だがな」
「いや照島さんへの配慮ですからねこれ?」
やっぱ一人で行かせたらダメだこの人。
怨霊や怪異の怒りを買って無惨に殺される未来しか目に浮かばない。
「──ケヒヒッ、ところでそろそろ文句の一つも言わせむがもごっ」
「……いきなりどうした?」
「すいません水餓が勝手に俺の口をですね」
「文句って私がさっき言ったことに対してかしら」
「そうだぜ姉ちゃん、どっちが強いかなんてやってみなきゃもががが」
「っだから勝手に喋るな!」
ああもう調子が狂う、自分の口が勝手に動いて自分のものじゃない声で自分が思ってないことを喋るなんて気持ち悪くて仕方がない。
「……こっちの問題も早いところ解決したいところだな」
「そのためには
「言われるまでもない」
「なるべく早めにお願いします……」
いい加減こいつに頼らざるを得ない日々から解放されて身体的には普通のお巡りさんに戻りたい。
割と本気で、切実に。
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