七 忌ミ児

「ア……ウ……」

「こりゃあ目当ての魂を呼ぶこと自体は成功したけど余計なものが混じりすぎたせいで怪異になった、ってところかぁ?」

「……かもな」

「ケッヒヒヒ、ご愁傷さんご愁傷さん!このご時世に鏡人形のまじないなんて廃れて久しいモンに遊び半分で手を出すからこんなことになるんだよなぁ!」

「……例え正論でも言って良いことと悪いことが──」

「死人に口なし、後の祭り。怒るも笑うも勝手だが、お前が今やるべきことはそれじゃあない」

「っ……」

舌打ちをしつつ静霊鏡を構えると水餓の笑い声が頭に響く。

こんなやつに言われるまでもない。

俺が今、やるべきことは──


について教えてほしい?」

「ああ、お前が知ってることを簡潔に説明してもらえると助かる」

「さらっと無茶言わないでくださいよ、忌み児にも色々いますし……」

「例えばどんなのがいる?」

「えーと……有名どころはおに鏡児かがみごですかね。どっちから聞きたいですか?」

「……鏡児、だな」

この反応を見るに最初から鏡児の話を聞きたかったんだろうな、享伍さん。

相変わらず回りくどい人だ、なんて言ったら痛い目を見ることになるから言わずにさっさと本題に入ろう。

「結論から言うとただの一卵性双生児ですね。鏡に映したような瓜二つの容姿が不気味だ不吉だって理由で両方とも間引かれる不幸な子どもたち、それが鏡児です」

「っ……何故両方なんだ、間引きというのは本来どちらか片方を殺すことだろうに」

「先に出てきた方、後に出てきた方。間引かれる条件は地域によって変わりますけど、鏡児の場合は間引く側が後の面倒を考えたら両方間引いた方が楽だろうって考えた人がいたんじゃないかってのが俺の所感です」

「そしてより確実に鏡児を間引くために厄払いの神に祭り上げる儀式の体裁を取るようになった、と」

「……享伍さん、実は俺より詳しいんじゃないですか?」

「関連資料を少し読んだだけだ」

「へ、へぇー……そうなんですかぁ……」

まずい、子捨て山の話をすっ飛ばして儀式とは名ばかりの殺人を行っていた話をいきなり出してくる人にこれ以上何を話せば良いんだ。

「暗条、お前は番鏡山で起きた火事についてどの程度知っている?」

「どの程度って……新聞に載ってた以上のことは──」

いや待てよ、この流れで聞いてくるということはまさか。

「──享伍さん、すっかり聞き忘れてましたけどあの山で何があったんですか?俺に鏡児の話を振ったのと無関係じゃありませんよね」

「否定はしないが説明する気もない。詳細を知りたければ後で報告書に目を通せ」

「ええー……ここは話す流れでしょうに……」

「日が暮れる」

「うわぁバッサリ」

まぁ否定できないワケですけども。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る