第4話
「……怜!さっき駅で事故ったの、結だったって!……まさかとは思うけど、結に何もしてないよね……?」
怜の家に着いてしばらくしてから、母親から連絡があった。結くん、駅の近くで事故にあったみたいよ、と。結の母から聞いたらしい。駅の近くで事故があったのは、ここへ来る途中で警察やら救急車やらを見かけたのでなんとなく分かってはいたが、まさか結だったとは思わなかった。
「事故?野々村が?」
「で?何も、してないんだよね?用事があるのを思い出したから先に行っていてくれ、って、あれ、嘘じゃないよね?」
「あぁ、あれは嘘だ」
「嘘……?じゃあやっぱり怜が結に手をかけたのか!?」
人の胸倉なんて、掴んだことない。争いは嫌いだった。自分が少し我慢して収まる諍いがあるなら、我慢くらいいくらでもできると思っていた。それが今日、初めて掴んでやろうか、と思った。
「まぁ落ち着け、あれは嘘だが事故のことは俺は知らない。お前に嘘を吐いて離れた時野々村に会ったが、僕は話をしただけだ。本当に事故のことは、知らないんだ。……もういいか?もう少し落ち着くまで待つから、その後で始めよう。嘘を吐いて、不安にさせて悪かった」
しばらく何も言えなかった。事故のことを聞いて混乱していたし、焦りから来る興奮で頭がぐちゃぐちゃだったのだ。
「……明日は結のとこに行くので、ここへは来ません」
嘘を吐かれたことへの若干の恨みと不信感を込めて、そう言うのがやっとだった。
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