四 鴉ノ社
「う……」
「あ、おきたー」
「お兄ちゃんおきたおきたー」
「…………あ?」
目を覚ますと見知らぬ子どもたちに囲まれていた。
何だこの謎すぎる状況は。
「ここは、どこだ……?」
いやそもそも何で俺は気を失って――
「……ああそうか、あいつのせいか」
じゃあここはあいつの住処、なんだろうか。
もしそうだとしたらこの子どもたちは――
「ねぇねぇお兄ちゃん、いっしょにあそぼ!」
「かくれんぼしよ、かくれんぼ!」
「……は?」
「お兄ちゃんがおにねー!」
「みんなかくれろー!」
「あ、オイコラ待て!」
呼び止める声に耳を傾けることなく子どもたちは部屋を出ていき、思い思いの方向へ走り去っていく。
「ったく、こっちの返事も聞かずに出て行きやがって……」
まぁ鷲子や鷹也も小さい頃はあんな感じだったから子どもは大体ああなんだろう。
「……しょうがねぇ、付き合ってやるか」
あの手合いは下手に放置した方が厄介なことになる。
それに――
「……うん?」
何か足に違和感を覚えると思ったら靴が無くなっている。
もしかしてあいつらの仕業だろうか。
「ああくそ、面倒ごとを増やしやがって……」
仕事で写真を撮りに来ただけなのにいきなり妙な奴に襲われて気を失い、目を覚ましたら覚ましたで見知らぬ場所で見知らぬ子どもたちの遊びに付き合いがてら無くなった靴を探す羽目になるなんて誰が予想出来るんだ。
もう滅茶苦茶すぎてワケが分からない。
「とりあえず虱潰しに……ん?」
ふと視線を動かすと子どもが一人部屋の隅に座り込んで本を読んでいる。
「……なぁに?」
近づいてくる気配に気づいたのか、こちらが声をかけるよりも先にその子どもは本から顔を上げる。
「お前は隠れなくて良いのか?」
「良いの。わたし、かくれんぼ好きじゃないから」
「すぐに見つかるからか?」
「ううん、さいごまでだれもわたしを見つけてくれないから」
「……そうか」
俺も昔はそうだった。
隠れる側になるといつも最後まで見つけられなくて、もしかして忘れられてるんじゃないかと不安になって――
「あなたはかくれんぼ、好き?」
「俺か?今はどっちでもねぇけど、ガキの頃はあんまり好きじゃなかったな」
「ふぅん……」
興味が無くなったのかその子どもは再び本に視線を落とす。
これ以上構うのは藪蛇、と見るべきだろう。
「――さて、そろそろあいつらを探しに行くか」
十数えてもいないしもういいかい、と聞いてもいないがまぁ大丈夫だろう。
そう楽観的に考えながら障子を開けて部屋の外に出ると広くて長い木造廊下が左右に伸びていた。
「……マジかよ」
今までいた部屋の造りから相当古い日本家屋だろうとは思っていたが、こんなに広い廊下があるのは想定外だ。
こうなると虱潰しに探す作戦は止めて、いかにも子どもが隠れそうな場所に絞った方が良さそうだ。
だったらまず行くべきは――
「あっ、見つかっちゃったー」
「やっぱりここにいたか」
案の定、すぐ近くの物置に隠れている奴が一人いた。
多分他の子どもも同じようなところ――例えば押入れの中とかに隠れていると見て良いだろう。
「ねぇねぇお兄ちゃん、次はどこをさがすの?」
「とりあえず手近な部屋の押入れでも……って何でお前がそんなこと聞くんだ?」
「いちばんさいしょに見つかった子がお兄ちゃんのおてつだいをすることになってたの」
「へぇ、そりゃまた親切なこった」
そういうことならお言葉に甘えてどこが何の部屋なのかを聞くとしよう。
「――これで全員、だな?」
幽霊四人に怪異三人。
見つけ損ねている奴はいない、はずだ。
「まだだよー」
「お兄ちゃん、まだ見つけてない子がいるよー」
「あぁ?まだいるのかよ」
いくらここが豪邸並みに広いとしても、子どもが隠れられそうな所なんてもう残ってないだろうに。
「……いや、待てよ?」
こいつらまさか――
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