第42話・みんな大好きシエラちゃん

 教室での騒動のあと、俺は周りのお客さんに取り囲まれて称賛を受けるシルフィーナさんをなんとか教室の外へと連れ出し、予め決めていた別棟の空き教室へシエラちゃんと一緒に移動をしてもらった。

 そしてそのあと、俺は用事から戻って来た赤井さんを連れ、シルフィーナさんとシエラちゃんが待機している別棟の空き教室への扉をコンコンと叩いた。


「シルフィーナさん、入っても大丈夫ですか?」

「大丈夫です、早乙女様」


 教室内から聞こえてきた返事を聞き、俺はスッと扉を開いて中へと入った。すると後ろに居た赤井さんが横から前へと走り抜け、シエラちゃんをぎゅっと抱き締めた。


「むぐっ」

「シエラちゃんごめんね! 私が居ない間に怖い目に遭ったんでしょ?」

「私は大丈夫、先生とシルフィーが助けてくれたから」

「良かった……もう絶対にシエラちゃんの側から離れないから安心してね?」

「うん、ありがとう、早矢香」

「シルフィーナさん、さっきはありがとうございました。おかげで大事にならずに済みました」

「いえ、魔界では荒事に巻き込まれる事はよくありましたので、お気になさらないで下さい。それよりも、いち早くシエラ様を守ってくれた事を感謝いたします」


 そう言うとシルフィーナさんは丁寧に頭を下げた。


「頭を上げて下さい、俺はシエラちゃんが大事だから守りたかっただけですし、その点についてはシルフィーナさんと気持ちは一緒ですよ」

「ありがとうございます、早乙女様」

「先生、シエラちゃんラブなのは分かりますけど、そのせいで出ちゃってますよ、羽と尻尾が」

「あっ!」


 俺の言った言葉のせいか、シエラちゃんは顔を赤くして浅く俯いていた。


「ご、ごめんねシエラちゃん、変な事を言って」

「変な事は言ってない、嬉しかった……でも教室ではいっぱい我慢してたのに、またそんな事を言うから……」


 シエラちゃんは俯いたまま更に顔を赤くしながら、恥ずかしそうにそんな事を言った。


「これはまた魔力のかけ直しですね」

「すみません、シルフィーナさん……」

「いえ、こういう事も想定の範囲内です。お気になさらないで下さい」

「ありがとうございます、それじゃあ自分は見回りに戻りますね」

「先生、頑張ってね?」

「うん、シエラちゃんもお仕事頑張って」

「うん」

「赤井さん、シエラちゃんの事は頼んだよ?」

「任せておいて下さい! 今度はしっかりシエラちゃんと一緒に居ますから!」

「うん。シルフィーナさん、あとはよろしくお願いしますね?」

「はい、先ほどの様な不埒者は二度と寄せ付けさせませんので、早乙女様は安心してお勤めを果たして下さいませ」

「頼もしいですけど、もしそんな人が居ても穏便にお願いしますね?」

「かしこまりました」


 シルフィーナさんと赤井さんにシエラちゃんを任せた俺は、頼もしい二人の事を信じて仕事に戻った。

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