第3話 【シニガミさん】と一人の少年

これは勉強のできる少年の話。

その少年は日々を勉強をして過ごした。

勉強ばかりだった。

友人もろくにつくらず、つくれずにいた。親しいのは親兄弟と親戚のみであった。

そんな少年は小さい時から両親に「いい人生を送るには勉強ができないとダメだ。」といわれ続けた。

そして少年は信頼していた両親の言葉に従って勉強をつづけた。

周りの大人はそんな両親に「もっと他に遊んだりとか友達を作ったりなど学ばせるべきことがあるだろう。」といっていた。

両親は取り合わずに、勉強が出来なければこれから苦労する。といっていた。

少年はそんな両親の言葉に、これから先苦労するならやっておいた方が良いと思い勉強した。

しかし勉強ばかり出来ても大人になった少年は周りから排除された。

そして少年はある日、周りのいじめに耐えかねて自殺を決意するに至った。


もう後戻りはできない。

目の前に広がるのは自分が住んでいた町。

少年は町を一望できる場所を死に場所に選んだ。



「ここは眺めがよくていい場所でしょう。」

「・・・そうだな。」

「今まで勉強ばかりだった。」

「・・・親もいただろ。」

「昔、ここに両親と来た時に両親はとてもいい顔をしてここを紹介してくれた。」

「・・・目の前で心を病んで自殺してしまったがな。」

「まさか、来てくれると思わなかった。シニガミはこんなことを聞いてくれるのですか。昔本に出てきたシニガミに最期を迎えてもらうとは。」

「・・・君はそこまで思い詰めていたのか。」

「ここって案外目立つのに人が来ないんですよ。・・・まるで僕の生き方みたいだ。」

「・・・君は誰に見て欲しくてこんなことを?」

「・・・・・・うるさい。」

「・・・君は誰かに見て欲しかった。誰かに気付いてほしかった。」

「・・・・・・うるさい、うるさい、うるさい、—ならばどうしたらよかったんだ。」

「——人にどう話しかけていいのか、どんな話が盛り上がるかわからないじゃないか!」

「・・・確かに。」

「大人は僕にこうしろ、あぁしろといってくるばかりで誰も僕という個人に関わってはくれないじゃないか。」

「・・・関わっていた人も居たよ。」

「そういう大人ほど両親を見て少しずつ距離をとっていくじゃないか。」

「・・・僕が何をしたっていうんだ。なんで僕からみんな離れて行ってしまうんだ。もっとそばにいてよ、ねぇ、だれかぁ。」

「・・・今は私がいるじゃないか。」

「お前も!今じゃなきゃいてはくれないだろ。」

「・・・君は誰かのそばにいようとしたかい。」

「・・・・・・誰もいないのに誰のそばにいればいいのさ。誰の近くに行けばよかったんだ。」

「・・・君はそれを誰かに言ったかい?誰かを頼ったかい。」

「・・・・・・・・・・いないやつにどう頼ればいいのさ。僕はもう死ぬんだろ。」

「・・・もうではなく死んでいるよ。君は一年前に死んでいる。一年前の今日、自作した毒ガスを吸って死んでいる。」

「うるさい。」

「・・・君は今の自分が見えるかい。今君の体はあそこに転がっているじゃないか。」

「・・・・・・・・・あぁあぁあぁぁぁぁああああぁぁ。」

「・・・私が来た理由はね、君の体を見つけてもらうためだ。」

「いらない」

「・・・君がここにいることを知ってもらうためだ。」

「そんなの頼んでない」

「・・・ほら来たよ、君を探していた名前もわからない誰かが。」

「・・・・・・なぁ。」

「・・・なにかな。」

「あんたは俺を見てくれるか?」

「・・・いつでもとは言えないけれどたまにはね。」

「またいつでもいいからさ俺のことまたみてくれるか。」

「・・・いいよ、また君のことを見に行くよ。」

「またね」

「・・・君は本当に気づいていなかったんだね。今君を探しに来たのは気味が一度だけ好きだと思いを伝えた彼女じゃないか。あれから合わなかっただけで君をここまで探してくれるいい子じゃないか。君を覚えていて、思っていてくれた子じゃないか。・・・君ってやつは本当に。」


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久しぶりの投稿で書き方が変わっていたらごめんなさい。

自分の作品をいい評価してくれる人がいてよかったです。

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