第21話 気持ちとパンツは一心同体③

「凪先輩〜、牡丹どこにおるか知りませんか? って何してるんや……」


 白乃だ。

 今一番会いたくない存在だったが背に腹はかえられない。俺は無理を承知で頼んでみることにした。


「い、いいところに来た。な、凪を何とかしてくれ」


 ここで荒い言葉遣いになると助けてくれる確率がほぼ0パーセントになるので丁寧にだ。そしたらこいつも少しは俺の気持ちを理解して助けてくれるはずーー


「嫌や、そのままやられとけ」


「………………」


 しかし返答はNOだった。自分の不甲斐なさに虫唾が走る。一瞬でもあんな考えで同情をひこうとした俺の方が間違っていた。いつだって何かをしようとしたらこういう風に裏目にでる。神はきっと俺になど味方してくれないのだろう。


「で凪先輩、牡丹知りませんか?」


「さっきプリン買いに行きました!」


「プリンか…………」


 助けてくれないのなら早くどっかに行ってくれと心の中で思ってみるがその願いとは裏腹に中々部屋を出ていかない。

 何かを考えているみたいだ。そしてその曇った眼差しがこちらに向いたので俺は顔を顰めてそれに反応した。


「な、何だ?」


「お前なんか知らんのか?」


 普段は知っていても絶対に教えてやろうとは思わないが今は状況が違う。


「お、教えたら助けてくれるのか?」


「あぁ」


 顎を上げ腕を組む。上から目線のその物言いに幾分か腹がたつが助けてくれると言うなら話しは別だ。


「た、多分近くのコンビニだ」


 込み上げてくる苛立ちを抑えそれを悟られぬように喋るが、顔にははっきりと出てしまう。口が何度もピクピクと動くが白乃はそれに気づいた様子もなくただ目を瞑り思案にふけていた。


「近くのコンビニ……」


 そんなのは後にでもすればいい。今お前がするべき事は俺を凪から助け出すーー


「分かったわ。ありがとうな」


「ま、待て。助けてくれるんじゃなかったのか?」


 こちらに背を向けゆっくりとドアに向かって歩き出す白乃に俺は慌てて問いただした。


「助ける? 私は「あぁ」しか喋ってないで?」


「も、もしかしてとは思ったが……お、お前性格悪すぎるだろ」


「そんな褒めんといてや」


 にやけ顔で嘲笑ってくる。


「ほ、褒めてない」


 本当に彼女は人の心を持ち合わせているのだろうか? 少々疑わしい所だ。


「じゃあそういうことで。凪先輩頑張ってください」


「ありがとうございます! 頑張ります!」


 白乃の応援が凪の闘争心をより活発化させた。先よりも力がまた一段と強くなっていく。


「が、頑張らなくていい!」


 俺もそれに負けぬよう必死に抵抗する。

 余計なちょっかいを出した人でなし野郎の姿はもうなくどこかに去っていた。恐らくはコンビニだろう。



 俺達二人の戦いはまだ続く。


 するとまたドアが開く音がした。

 誰かが助けにきてくれたのかもしくは邪魔をしにきたのか定かではないがなるべく前者であって欲しいと強い願いを込めながら俯いていた顔をそこへと向けた。


 ……俺の目に映った人物はーー


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自販機少女の恩返し カリカリポテト @KARIKARIPOTETO

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