ルーシーと魔法と元神と ~前~
ルーシーが昨日の昼に帰ってきてから2時間が経った。
昼は既に食べていたため何もこれといった出来事はなかったが、その青が問題だった。
「アーブ君っ」
アブがリビングで休んでいると後ろから声が掛かる。振り返ると赤茶をロングストレートのままにしたルーシーがいる。
「今からちょっとみんなで散歩しない?
ユリーナはさっき忙しそうにしてたから、私とアブとエリックでさ」
散歩と言ってはいるが片手に持った杖が、それを承諾した際にこれから起こりうることの不穏さを物語っているのがわかる。
だがこのエリックは少し抜けているのか、
「いいね、それ、行こうよ。」
(後で氷魔法で冷やしたキンッキンの水風呂にぶち込んでやる。)
「うん、いいよ」(クソが)
「じゃあ早速行きましょ!近くの川のすぐ側に大きな草原があったわよね?」
「………そうだね。」
アブは少し、いや、かなり面倒くさそうに返事をし、外に歩き始めた2人を追う。
「やっぱり暑いわね〜」
「ふぅ、そうだねぇ」
やはり夏の初めだからか、それほど暑くもな
いがやはり暑い。
ここは氷魔法でも使って冷やすか。
「【
ヒュゥッとアブの周りを冷えた風が覆い熱を持ったからだを冷やす。
「アブ、何の魔法を使ったの?アブの辺りだけ涼しいね。」
冷えたことより使った魔法の正体の方が気になるような様子で尋ねるがルーシーは違う。
目をまん丸にして少し固まる。
「え、ア、アブ、それって氷魔法よね…?」
「ん、涼しいよ」
「何で使えるのよ!?」
「使えるんだもん、理由なんてないよ。」
「アブー僕にもそれかけてよー」
「あ、私にもお願いできるかしら?」
「はいはい……」
2人に魔法をかけると少し幸せそうな表情をしていたので良しとする。
「あ、ねぇ、アブ……その、少しいいかしら。」
右手に持った杖を胸の前で両手に持ち少し俯きながら聞いてきた。
アブには内容がわかっているみたいだが。
もしも違っていたら、という淡い期待を込め問い返す。
「何?」
「その、わ、私と…
「ごめんなさい、嫌です。」
「そ、そんな……振られた……。」
「振ってはいませんよ。ただやりたくないだけなんです。」
「そんなこと言わないであげなよ、ちょっとなんでしょ?」
「じゃあ兄さんがやる?」
「え?エリックとはやらないわよ、要らないわ。」
「要らない……要らない……要らない……」
「ねぇアブお願い、1回だけだから……」
何かを唱えるエリックを押しのけ、
ルーシーは目尻に涙を浮かべ必死に訴える。
「はぁ…分かりましたよ。」
「やった♪じゃあ、負けた方が勝った方の言うことをひとつ聞くってのでいいかしら?」
「はいはい‥」
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