長女の帰還
少しばかり年月が経ちアブは現在5歳、
次第に村の生活や家族との暮らしにも慣れた。そんな夏至のこと。
「マルクス様ー、ルーシーお嬢様がお帰りになりましたー!」
「そうか、すぐに行く。先に出迎える準備をしておいてくれ。」
「ルーシー姉様か…久しぶりなんだよなぁ」
そう、我が家の長女ルーシーは10際になった時に王都の学園に通い始めたため長らく家にいなかったが、今回の夏季休暇を利用し家に戻ってきたらしい。
はっきり言おう、私はあの人が苦手だ。
何を考えているのかまるで分からない。
そうしてどうしようかとまだな思考を繰り広げているうちにルーシー姉様は帰ってきた。
「ただいまー!アヴィー!何処ー?」
「頼む見つからないでくれ…」
アブは関わり合いたくない、その一心で部屋のクローゼットの中の服に紛れ隠れる。
普段着ない冬物の服が多いため、クローゼットの中はとても暑い。
「流石に…見つからないよな?」
―――バン!
「いた!アヴィ!久しぶり!大きくなったね〜。それにちょっと格好よくなってるし〜」
「はぁ…そうですか」
このひとは私がいれば無理矢理に振りほどかない限り半永久的にずっと私の体を抱きしめ、だらしない顔をして笑っている。
それに、無理に振りほどくと目に涙を浮かべしがみついてくる。やはり苦手だ。
「ねぇねぇ、こっちにいる間はいっぱい遊ぼ?いいでしょ?」
「え、いや、あの…」
「お姉ちゃん!アブが困ってるでしょ!」
「あ…ユリーナ、いたんだ」
何だこの扱いの差は。
突然現れ文句を言われれば仕方の無いことなのかもしれないが何もそんな冷酷な顔で冷めた視線を送り付けなくても。
そういう点ではユリーナ姉さんが寂しそうな顔をしているのが可哀想に感じる。
普段は振り回されているが。
「可哀想だと思うよ?ルーシー姉様。」
「いいじゃない別に。アブは私よりユリーナの肩を持つの?」
「ごめん、どっちも持つ気ない。」
二人とも「酷いっ」とでも言いたげな顔をしている。
この夏季休暇、とっとと終わらないかなぁ。
そんなことを胸の内に思うアブであった。
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