アブスタール、開眼す ~前~

姉との件の稽古が終わった翌朝、この領の頂点である我が父、マルクスに執務室に呼び出され座っていた。


「さ、今日呼び出したのは他でもない。

昨日の件についてだけど、分かってるよね?」


「呼び出されるようなことなんですかね?

ただ、完全に相手を舐め腐り、不覚にも一本討ち取られただけじゃないですか?

確かに泣かせはしましたが…、

むしろ呼び出されるべくはユリーナ姉さんの方では……?」


「違うんだ、泣かせた事で呼び出したんじゃない。」


「では何故?」


「村に自警団があるのは知っているだろう?」


村の自警団というのはマルクス父さんを筆頭にし、万が一の時に自らが自分たちの村を守るため、常日頃から訓練している村人達で構成されたもの。

魔物が森に出れば定期的に駆逐しに行く。


「えぇ、当然」


「で、そこの隊長を務めているパークスという人がいるんだよ。」


そうだったのか。知らなかったが。


「ユリーナが打ち負かされたと聞いて、その実力が如何程のものか知りたいと言われてね。」


つまり、自身の目で見て確かめたい。

そう言い出した隊長さんのために俺は今から剣を持って戦いに行かねばならないのか。

巫山戯るな、潰すぞ。


「軽く捻ってくればいいのですか?」


「んー、まぁ、ちょっと手合わせをね…」


「速攻で行って片付けてきますよ…!」


そう言い残し、家を出た。


ある程度舗装された道を脚に身体強化を掛け走る。

しかし身体強化をするとここまでに体が軽く感じられるのか。


凡そ30秒ぐらいで村に着いたものの、パークスとかいうのはどこだ?


「聞けばわかるか…」


『はーい!見てってくださいねー!』


何だろうか、何か美味しそうなものを持った男が何やら叫んでいるみたいだが。


『おー、そこの坊ちゃん、串焼き、買ってくかい?』


「串焼き?なんだそりゃ」


『これはな、ギュウタウロスの肉を串に刺して、うち特製のソースに漬けてそれを焼いた

ものだよ。美味いから食ってかねぇか?』


「分かった。お幾ら?」


『一本銅貨1枚だよ!』


「じゃ、1本で。」


『まいどー!』


ふむ、これが串焼き……。

匂いは相当なものだ。食欲をそそるいい香りだ。

果たして味は……。




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