元神と奇怪な鳥

大分月日も流れ私ももう3歳だ。

今日は朝から家の近くにある大きな木の下で寝転んでいる。

しかし、私にはわかる。

嫌な予感がする、と。


誰かが走ってくる。だが言うまでもなくそれはバルト家の次女にして私が問題児としている我が姉、ユリーナ。

歳は7つにもなるがおつむは残念なことに私以下だ。

毎朝毎朝叩き起こしに来ては、行きたくもない散歩に連れていく。


しかも往く場所が完全に3歳児の行く場所では無い。

道が碌に整備されていない角度の厳しい山。

流れの非常に早い川の川沿い。

だがそれもこの子にとっては善意なのだろう。

嫌がらせがしたければ、こんな屈託のない笑顔は見せない。


「ねぇ、アブ、また寝てるの?」


「ん…ほっといて…」


多分こんなこと言ってもまた強引に連れていくに決まってはいるが。


「ふ〜ん。そっか。じゃあ私も一緒に寝る」


「どうぞ……って、え?え??」


「な、何よ…失礼な顔して!」


真顔なんだが、結構傷つくな。

いや、だがしかしここで放って置いてもらえるのは大きい。

普段なら「それより今日は山に行こ?」

なんて、人の話などまるで無視して話を進めているくせに。


『ピッヒョーロロロロ!!」


「あ?ん?なんだ今の声は。」


「あぁ、あの鳥?」


「鳥…だと?なに?それ。」


「あれよ、あれ。あそこの木の枝にとまっている、あれ。」


なんだあの奇っ怪な生き物は。

口がとんがっている。

それに羽根?天使族に付いているものよりもだいぶ貧相だが…

1番はあの声だ。あいつはなんの言語を話しているのだ。


「あれはね、ピヒョウ鳥と言って、あの鳴き声が特徴なの。」


「へぇ…そんまんまだ。けど、結構可愛いなあいつ。」


「因みに、あの鳥昨日の夜食べたわよ?」


何故この子はこんな空気の読めない発言をするのか。

結構可愛いなって言った直後にそんなことを言ってどうしたいのだ。

まぁ、昨日食べたあの鶏肉というものは美味しかったが。


待て。という事は……


こいつらを家に持って帰ればきっと今日の夜もこれが食べられるという事なのか?


なら、【絶命エリミネイトコア】……


アブが術を唱えた瞬間周りのピヒョウ鳥がバタバタと落ちてくる。


その夜、10羽のピヒョウ鳥を抱えたアブの姿を見て、両親ともに嬉しそうにしていたが、

その日の晩御飯にその鳥は出てこなかった。

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