第8話

屋上は少し肌寒い。

少女は、フェンスにもたれかかって、景色をみている。


長い髪が、風になびいている。


少しだけ、近づいてみた。


「こうして見ると、世界は小さいね」

「えっ」

「でも、その世界に、さまざまなドラマがあるんだね」

「ああ」

「平凡な人生なんてないんだね。みんな、人生というドラマの主人公なんだ」

「志奈さん・・・」

近づいて、景色を見る。


「一郎くん、あそこに島が見えるよね」

「うん」

「あの島にも、たくさんの人がいて、それぞれのドラマを歩んでいるんだね」

顔は合わせていない。

でも・・・


「一郎くん・・・」

「志奈さん?」

「私、最後まで演じきるよ。自分が主役のドラマを」

「ああ」

「だから、君も自分のドラマを演じて・・・最後まで・・・」

「うん」


数年後


志奈さんが主役の映画が公開された。

大勢の観客で賑わい、大ヒットとなった・・・


でも、志奈さんはいなかった。

映画ではなく、七海志奈というドラマを演じ切り、見事に幕を下ろした・・・


志奈さんは、あの世で幸せに暮らしているだろうか?

向こうでのカーテンコールを、楽しんでいるだろうか?


それとも、また・・・


今、俺は旅をしている。

ひとりの気ままな旅だ・・・


この旅で何かを見つけたい・・・


で、もうひとつ楽しみがある。


「すいません」

近くの人に声をかけた」


「何ですか?」

「写真、撮っていただけますか?」

「いいですよ」


気に入った風景と一緒に写真を撮ってもらっている。


「はい、どうぞ」

「ありがとうございます」

「上手く撮れてますか?」

「はい。ありがとうございます」


撮ってもらった写真を見る。


「ははは、やはり、いたな。元気そうだ」


そこには、俺と一緒に、志奈さんが笑顔で写っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

守護霊との約束 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る