第6話
「一郎くん、着いたよ」
「ここは?」
「国会図書館よ」
「国会図書館?」
初めてきた。
「どうして、ここへ?」
「さあ、中に入ろう」
「ちょっと・・・」
「大丈夫、幽体だから、他の人には見えない」
「だけど・・・」
いざという時は、女の方が強い。
「あそこをみて」
子供たちが本を読んでいる。
それだけだと思うが・・・
「わからない?」
「ああ」
「あの子たちが、読んでいる本」
「本?」
よく見てみる。
「あの本は、俺が昔書いた、本だ」
「思いだした?」
「ああ、だけど記念にいくつか作ってもらっただけで・・・」
そう記念本。
市販はされていない。
でも、自分の生きた証を残しておきたかった。
「あの子たち、君の本を夢中で読んでるね」
「ああ」
「わからない?君は、あの子たちに必要とされているんだよ」
「まさか・・・そんなはずは・・・」
志奈さんは、首を横に振る。
「あの子たちだけじゃない。君の本に・・・君の絵に・・・
多くの人が、心を癒されているんだよ」
「なんでそんなことが?」
「さっき、君の過去を探った時に、一緒に見えたの・・・
君は、あの子たちを、たくさんの人の期待を裏切るの?」
「志奈さん?」
志奈さんは、俺の肩を掴む。
「思いだして、昔の君を・・・
まだ間に合う。お願い、願って・・・
私も、君に助けられた者の、1人なんだよ。
私のためにも、生きて・・・」
志奈さん?
その瞬間に、心の中のもやもやが晴れていく気がした・・・
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