第2幕 水神様は色黒ビッチ系JKギャル⁈

 話は――3日前に戻る。


 場所は、大自然と妖怪ようかい伝説でんせつが多い岩手県。

 柳田やなぎだ國男くにおの『遠野とおの物語』や民話みんわ伝承でんしょうかい奇譚きたんが数多く現代に伝えられ、その痕跡こんせきも多く残る県である。また宮沢みやざわ賢治けんじ幻想げんそう的な世界の舞台ぶたいともなっており、石川いしかわ啄木たくぼくの詩の様な、素朴そぼくな文化にかこまれた県でもある。


 その土地を縦断じゅうだんするように走る国道4号線を――星海ほしみつばめみずからの愛車である軽自動車に乗り、その国道沿いのファミレスにおとずれていた。

 時刻じこくは夕方の5時くらい春先はるさきの空はまだ明るかったが、風は少しはだざむい。


 店内に入ると、次第しだいみ始める時間帯に相応ふさわしく、ほとんどの席がまっていた。

 窓際まどぎわ辺りにる、若者グループは大学生であろうか――ノートを各自かくじ開きながら、話をしている。

 また、入り口付近ふきんからは死角となっている場所にすわっているであろう――友達同士での会話や楽しそうな笑い声なども聞こえてくる。

 やはり家族連れが多く、子供達の元気な声が聞こえたりしている。それをしかる母親の声も聞こえてくる。「いぃたぁだきぃ〜まぁ〜す!」という大きな声を聞くと、何だか微笑ほほえみが自然と出てしまう様な雰囲気に包まれてしまう。


 星海ほしみつばめは、待ち合わせをしている事をウェイトレスに伝え、案内によって店内の奥へと進む。

 さき客層きゃくそう以外にも、カップルの姿が何組か見える。


 店内の奥付近ふきんまで来ると、「こっちぃ〜だよぉ!」と星海ほしみつばめを呼ぶ大きな声がした。

 店内に流れるBGMと他の客達の話声でさわがしくはあったが、その声は彼の耳に届き、声の主の方を見遣みやる。声には聞き覚えがあった為、それが誰かは、ぐに分かった。

 彼の視線の先には、茶髪のエアウエーブパーマの女子高生色黒いろぐろギャルが、大きく手をっている。


「お久しぶりですね。清衣すいさん」

 声の主のすわる席に近づくと、星海ほしみつばめはそう声をけた。


「本当にぃ〜ひさぁだよ〜。つばるん、全っ然っ、本社にぃ~来ないんだもん!」


 ギャルっぽい感じを前面にし出した女子高生の正体は、『本社』こと『守護者しゅごしゃの見えざる手(略してIHOG)』の特殊とくしゅエージェントにして、保護対象ともされている『水神』である。

『水神』とは、文字通り、水をつかさどる神の事である。世界各地に存在し、其々それぞれ、様々な姿をしている。巨人だったり、巨大海洋生物に似た姿をしていたり、龍であったり、蛇だったり、それ以外の水生生物だったり、異形いぎょうの姿をしていたりする。古来こらいより『水神』は、人間にとって、生活にかせない神の一つであり、その伝説も数多くある。実質じっしつ、伝説以上の『水神』は存在している。

 星海ほしみつばめに「清衣すい」と呼ばれた――色黒いろぐろビッチ系JKギャルは、数多く存在する水神の中でも、かなり高位こういの水神で、姿は不定形ふていけいの存在であるが、彼に出会い、人間の姿をとる様にしているらしい。何故なぜ色黒いろぐろビッチ系JKギャルの姿をしているかは、謎である。


「うーん。本社は東京ですからね。遠いですよ」


『本社』と呼ばれる『守護者しゅごしゃの見えざる手』とは何か?

 簡単に言えば、オカルト的な事柄ことがらを取りあつかう秘密結社である。いにしえよりその様な組織や団体は、一般人には知られずに、世界各地に数多く存在しているのであるが、『守護者しゅごしゃの見えざる手』もその一つで、結成けっせいは比較的新しい。だが、その功績こうせきや社会的権力・財力といったものは、他の団体や組織にも、ひけをとらない。


「え〜。しえちんに頼めばぁ〜、すぐじゃ〜んっ」

 そう言いながら、自分のすわっているシート席のとなりをポンポンとたたく。「正面の椅子席じゃなくて、となりすわって」の意思表示である。


 星海ほしみつばめは少し躊躇ためらったが、だまって、となりすわる。


 すると、清衣すいうれしそうに、星海ほしみつばめう様にくっ付く。


「――!?」

 清衣すい豊満ほうまんな胸が腕にあたってきたので、それをせいそうとする言葉を口にしようとしたのだが、星海ほしみつばめにしか見えない織乃宮しきのみや紫慧しえ怪訝けげんそうな顔を見て――だまる。


 織乃宮しきのみや紫慧しえは、星海ほしみつばめに触れていない間、彼の周囲は勿論もちろん、彼の身体すら見えていないらしい。

 彼女がる場所を、彼は知っている。

 彼女以外のありとあらゆる存在自体が絶対しん空間で、唯一ゆいいつ、彼のみが侵入しんにゅうゆるされた場所――つまりは、2人以外の全てがしんな、何も無い空間である。

 それは、彼女に再会した場所でもあった。


「――そっ、それはそうと……何でさんが、こっちへ?」


「う〜ん、あのねぇ〜、玲汰れいたンがねぇ〜。仕事をつばるんにたのみたいんだってぇ〜」


玲汰れいた』とは『守護しゅごしゃの見えざる手』の代表取締役とりしまりやくである。年齢はわかく、大体20代前半くらい。身長は170㎝をゆうにえ、せた体型。普段から、顔には包帯をいているのだが、ところどころに見える素顔すがおからイケメンである顔が見て取れる。長髪で、よく様々な色にえをしている。V系バンドマンを彷彿ほうふつさせる容姿ようしであり、実際、インディーズではあるが、V系バンドでベースを担当している。夢はメジャーデビューで、音楽で有名になりたいらしい。本職の立場上、いそがしくて、バンド活動がなかなか出来ないのが、現状げんじょうではあるが……。


「――はっ、はい。そっ、それは良いんですけど……。なっ、なんで、わざわざ、こっちに清衣すいさんが?」

 冷静をよそおいつつ、何とか会話に違和感が無いように努める星海ほしみつばめ

 なにしろ、そばには『怖い監視かんしやく』がるのだから……。

 とは言え、織乃宮しきのみや紫慧しえには、星海ほしみつばめの声だけが聞こえる。ゆえに、自身のはっする言葉にさえ気を付ければ、乗り切る事が出来るとんだのだ。


「つばるんに会いたかったにぃ〜決まってるじゃぁン〜」

 そう言うと、星海ほしみつばめほおをツンツンとく。


 星海ほしみつばめの心情などはおかまいなしの行動に、言葉がいて出そうになるが、彼はぐっと飲み込み、彼にしか見えない織乃宮しきのみや紫慧しえの姿を見る。


 なにしろ、目が怖い。目がすわっている様に見え、その奥には、闇を感じる。何かを探りながらも、それを暗闇でおおっている。顔つきも、無表情をよそおいつつも、その裏には、氷のような怒りが感じられる。

 そもそも、「清衣すい」という名前を出した事がいけなかった。『神をも恐れぬの錬金術師』である織乃宮しきのみや紫慧しえは、当然、彼女の事を知っている。なにしろ、星海ほしみつばめめぐって、以前、とんでもない事態じたいを引きこしそうになった相手でもあるのだ。

 人前であろうとも、いますぐにでも、彼にとびかかり、姿をさらしてもおかしくない状況じょうきょうだと、彼は判断した。


「それでねェ〜。あのねぇ〜、玲汰れいたンがァねぇ〜」

 そんな星海ほしみつばめの心配などかまいなしに、清衣すいくわしくはなし始めた――。


 世界には龍脈りゅうみゃくと言うものがある。大地をうように広がるそれは、言わば、エネルギーの流れであり、日本では、富士山から大きな流れが各地に流れている。

 人間の文明の繁栄はんえいは、その恩恵おんけいを受け、各地に都市を形成けいせいしてきたのである。

 当然とうぜん、東北地方の岩手県にも龍脈りゅうみゃくは流れている。都市としけんと地方の違いは、その龍脈りゅうみゃくの太さや数に影響えいきょうしている。

 昔から人間は、その事をよく知っていたのだが、現代においては、そういった知識はオカルトの部類ぶるいに入れられ、ほんのひとにぎりの者達しか知らない事である。

 そのエネルギーを利用した例としては、権力者の拠点きょてん場所・寺社仏閣じしゃぶっかくなどで、学校の様な人間教育の場所などれにあたる。

 また、そういった場所は、ぞくに『パワー・スポット』と呼ばれる。


 そんな人間の生活に根付いている――その龍脈りゅうみゃくにも、問題が起きる事がある。

 まれに、やぶれた様になる事があるのだ。そういった場所は『龍脈りゅうみゃく亀裂きれつ』と呼ばれ、時として、異変いへんきる。災害であったり、異常な事件であったりと、様々な形で現れるのだ。


――それでは、本題ほんだいもどるとしよう。


 その『龍脈りゅうみゃく亀裂きれつ』が起きやすい場所が、この東北地方にもなん箇所かしょかあるのだが、その一つを監視かんしして欲しい――というのが、依頼内容である。


「……まあ、監視かんしだけなら、俺にも出来そうだし、いいですけど……そう言えば、前任者ぜんにんしゃの方はいらっしゃらないんですか?」

 星海ほしみつばめは、る疑問を端折はしょっていた。


 こういった場所には、古くからそういう役目を持って、その土地に住む者達や、また、それを専門とする組織や団体の者達がはずである。

 さきにも述べた様に、世界には、そういった組織や団体はいくつもあり、時代によって、思想や目的、または、えいえいという点においても、役目の割合を変えて、存在してきた。

 当然の事だが、国単位の組織にもそれは当てはまり、行政や司法、軍事・経済・民事などの機関にも、それは影響を与え、そういった役目の者達が潜入せんにゅうしているのは、公然こうぜんの秘密とされている。

 これも先述せんじゅつしたように、日本国内にも、そういった組織や団体はいくつもあって、星海ほしみつばめ所属しょぞくする『守護者しゅごしゃの見えざる手』もその一つであるが、結成けっせい比較ひかくてき新しい事と、他とくらべると規模きぼが小さく、人員数が少ない。

 話は戻るが、について――以前から『守護者しゅごしゃの見えざる手』のエージェントがいていたとは考えがたい。何しろ、人員数的に、専属せんぞくで長期の任務を続けていくには向いていないのだ。そう考えると――その土地には、此方こちらの組織外の前任者が居て、何らかの理由で、此方こちらに依頼として、まわって来たと考えるのが、妥当だとうである。

 それに、普通ならば、電話やメールの様な通信方法でむ事に、清衣すい星海ほしみつばめの元へと寄越よこす意味がわからない。特殊とくしゅエージェントでありながらも、保護対象の『水神』である。子供のつかいみたいな事をさせるとは思えなかった。


「うゥ〜ン。なんかぁ〜ねェ〜。『財団ざいだん』とぉ〜、めたらしぃ〜よぉ。ンでぇ〜、そのぉ〜元からたぁ〜、『前任者ぜんにんしゃ』ぁ〜?って人もぉ、おお怪我けがしたみたいでネ〜ぇ。なン〜かァ〜、『財団ざいだん』からわぁ〜ねェ、わりの人ぉ〜、出せないンだァ〜てぇ」


 世界に支部を持つ大手おおて組織の一つ――『ざいだん』。

 はんえい組織の『守護者しゅごしゃの見えざる手』とは違い、完全なるえい組織であるが、規模きぼが大きく、『確保・収容・保護』をかかげた研究機関でもあり、各国に太いパイプラインを持つ。当然とうぜん、日本も例外れいがいではなく、日本支部が存在し、各機関にもつながりがある。

ざいだん』の日本支部とは、此方こちらの組織と、表面上は友好関係にあるが、玲太れいたはあまり良くは思っていないらしい。


 どうやら、前任者ぜんにんしゃは、別の組織・団体、しくは、血統けっとうの者だったのだろう。

 そこに『ざいだん』が何らかの理由でんで、一悶着ひともんちゃくした結果、前任者ぜんにんしゃおお怪我けが任務にんむ遂行すいこう断念だんねんせざるをなくなり、『ざいだん』も形上かたちじょうは手を引き、此方こちらの組織にまわって来たのであろう。

 大手おおて組織とはいえ、あまり横暴おうぼうな事をすれば、他の組織・団体の標的ひょうてきになりかねないのである。


財団ざいだん』の、その何らかの理由が気になるところだが、清衣すいも聞かされていないらしい。


「あぁ〜そうだァ〜。これぇ〜渡してェ〜てぇ言われてたンだったァ〜」

 そう言って、自分がすわっているシート席に鎮座ちんざする物々ものものしいジュラルミンケースを、よいしょとばかりに持ち上げ、星海ほしみつばめの前に置いた。


 確かに、清衣すいの所に来た時から、気にはなっていたそれを見て、星海ほしみつばめは“……いつ、それを持ち出してくるかと、待っていたんだけどね……”と心の中で苦笑くしょうした。

 中にはについての詳細しょうさいな資料が入っているのだろう。下手へたすれば、これを受け取った時点で、ことりていたのかも知れない。

 テーブルに置かれたジュラルミンケースに手をかけ、開ける。

 それにしても、こんな物を持って歩く色黒いろぐろビッチ系JKギャルの姿は、さぞ、人目ひとめを引いたであろう。

 後で、玲太れいた抗議こうぎの電話をしなくてはと、再度、心の中で苦笑しながら、ジュラルミンケースの中の書類に目を通す。ふと、視線を落とすと、る物に目がいった。

“……?…………⁇――っ⁈”

 それには、星海ほしみつばめ自身の証明写真と、当人とうにんの名前が書かれていた。

 何処どこかで見たような手帳サイズの――それは、であった。

 書類を片手でしやり、残りの手でつかんだ学生手帳を、目の前に持ってくる。

 間違まちがいではない――それは高等学校の学生手帳であった。それも、何十年も前にかよっていた学校のものではない。あたらしく、聞きれない名前の学校名のものである。

 今度は、しやっていた書類を、目を皿のようにして、ものすごい速さで目をとおす。

“……やっぱり……”

 それは見当けんとうちがいではない――。

 高校1年生の転校生として東北地方の高校へ転校して来たという、彼の偽装ぎそうカバーストーリーの内容が、書類のたばの中にちらほらと見えた。

“……何で……?”

 そう思い、書類をさらななめ読みすると――どうやら、その『龍脈りゅうみゃく亀裂きれつ』はその高等学校の敷地しきち内にあるらしい。


 たしかに、さきにもべたように、龍脈りゅうみゃくとおる場所には、学校が建てられたりする。ふるき日本の『強いくにつくり』の一環いっかんりが、知らずして、いまだにそういった形となっているのであろう。


“でも、何で、生徒として……’’


 そんな星海ほしみつばめの表情から、清衣すいは、その問いに答える。

「何かぁ〜、玲太れいたンがァ〜ねェ。『何かあった時、ぐに対応たいおう出来る、学校関係者が良いよね〜。そうなれば、先生か生徒しかないじゃん!自由がく事を考えれば、生徒しかないよねッ!』だってェ〜」


 確かに若く見られる事が多いとはいえ、40歳の男に、高校生のりをしろなんて、ちゃにもほどがある。

 大体だいたいにして、もし、知り合いにでも会ったら、厄介やっかいな事になるのは、目に見えている。


玲太れいたンがぁ〜『前任者ぜんにんしゃ完治かんちするまであいだだから、お願いっ!』だってェ〜」

 先程さきほどから、玲太れいたの口調を真似まね清衣すい悪気わるぎは無いのであろうが……。


「いや、無理だよ……そんなの……」


「えぇェ〜。何でぇ〜?だァ〜ってぇ〜、前にィ〜、『学生にもどりたいよ』って、つばるん、言ってたじゃン!だから、玲太れいたンに『つばるん、やってくれるよゥ』ってェ〜、言っちゃったよぅ〜」


 確かに、前にそんな事を言ったような気がする――星海ほしみつばめは、心の中で頭をかかえる。

 まさか、なにい一言が、後になって、みずからの首をめる事になるとは……。


 大抵の大人は、考えた事がある――『大人のさが』を、清衣すいに説明するのは至難しなんわざであろう。


 よって、星海ほしみつばめは「だって、問題点があるからね」と理由を説明する事にシフトチェンジする。


「問題点ってぇ〜?」

 不思議そうな顔をしながら、たずねる清衣すい


「40歳なのに、うそいて、高校生のフリをして、もし、他の人にバレたら大変な事になるからね」


「ふゥ〜ン。よくわかんないんだけどォ〜、アタシ達のぉ〜仕事ってェ〜、それをォ〜、バレないようにするのもぉ〜 、大事じゃあァ〜ないのかなァ〜?」

 あいわらず、不思議そうに話す。

 それにしても、けんらずの水神様にしては、べんが立っている。


「……そうなんだけど……。ほら、岩手県は広いとはいえ、知り合いに会う可能性もあるし」


「それはァ〜、そういったァ〜状況じょうきょうもぉ〜、やりげるのがァ〜、プロってもんじゃァ〜ないのぉ〜?」


 まったくその通りである。

 あまりの雄弁ゆうべんさに、舌を巻く星海ほしみつばめ

「……いや、40歳なのに、15歳の高校生になんか見えるはずないし……」


玲太れいたン、言ってたよぉ〜。『見た目は心配ないヨ!』ってぇ〜。『絶対にバレないっ!』だってェ〜」


 まさか、こうも論破ろんぱされるとは思わず、しばらく、声を失っていた。

 社会人のさがが、手の届かない所に刺さっているとげの様に、チクチクとうずく。

『上司からの指示は、ず、やってみてから、問題点をげろ』

“……問題点が、あからさまなんだけどね”

 とは言え、からの指示である。その点を加味かみした上での依頼であろう。


 しばしの時がぎる――。


「……わかったよ」

 とは言え、渋々しぶしぶといった感情はぬぐえないでいる。


 清衣すいうれしそうに「良かったァ〜。じゃあァ〜、玲太れいたンにぃ〜伝えておくよぉ〜」と笑顔で返した。


 清衣すいがやたらにうれしそうにしているのが、何となく気にはなったが、やはりぬぐれない不安を仕舞しまむ様に、ジェラルミンケースに書類のたばと学生手帳を仕舞しま星海ほしみつばめ


 まさか、清衣すい雄弁ゆうべんさは、玲太れいた知恵ぢえであり、『後で、同じ高校に通わせる』という成功せいこう報酬ほうしゅうっていたとは、星海ほしみつばめは夢にも思っていなかった。






 店外に出ると、すでに暗くなった空は、ネオンの光とあわかさなって、何処どことなく、幻想げんそう的であった。

 駐車場には、車はほとんど無くなっていた。


「それじゃぁ〜あ、帰るねェ〜」


「……うん。気を付けて帰るんだよ」


「うんっ!わかったぁ〜。じゃァ〜ねぇ」

 そう言いながら、手をかざす。

 清衣すいの姿が次第しだいうすれて、透明とうめい人影ひとかげとなり、それはびる様に形を変え、段々だんだんと大きくなりながら、ゆっくりとい上がる。


 星空へと向かう清衣すいを見ながら、星海ほしみつばめは力無く、手をる。


 この時の東京へ向かう清衣すいの姿が、各地かくちの目撃者達によってカメラにおさめられる事となった。

 そして、後日、『怪異かいいなぞ巨大きょだい人影ひとかげ⁈UMAのヒトガタか?』という記事きじがオカルトの一面をかざる事となるのであった。

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