第19話 ぶらぶらふわふわ
僕は口を目一杯開いて空中にぶら下がっている。
風が吹くと頭は動かず、体が揺れる。ときには、くるくる回る。
すべて、みーんな、体から抜け落ちて、ぶら下がっている。ああ楽だ。
僕は何を気にして、気に病んで、おろおろくよくよちまちま生きてきたのだろう。
もともと、ただ空中に浮かんでいただけだったのに。今更、どうでもいいけど。
下らぬ奴らの下らぬ言動にかき乱されて、地べたを転げ回って。
頭の上には宇宙が拡がっている。僕は宇宙からぶら下がっている。広いなあ、宇宙は。宇宙は広いなあ。
東の風が吹けば西に傾き、西の風が吹けば東に傾く。
北の風が吹けば南に傾き、南の風が吹けば北に傾く。
当たり前だ。でもこれまでは当たり前に生きていなかった。人間のちっぽけな脳味噌から出てきた考えに縛られ、ちっぽけな脳味噌の奴らの考えに振り回され。
なんであんなに何かにしがみついていたんだろう。そしてしがみついたものに振り回されて。くそっくそっ!
でももういい。本当は最初から何もなかったんだ。何があると思っていたのだろう?何があると思ってじたばたしてたんだろう。
もういい。もういい。僕は宇宙の中に、無限の宇宙の中に。ただ宇宙の中にぶら下がっている。
ぶらぶらふわふわ。
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