第16話 血しぶきとタンポポ
人間は何をしでかすかわからない。僕に構うな。話しかけるな。
にこやかに、あたらずさわらずに会話している僕が見える。
やめてしまえ、と僕は叫ぶ。何で嫌だと思っていることをするんだ。悲しい。傷つくだけなのに。憎しみと諦めが生まれるだけなのに。
認知欲求とかいう。認知してもらってどうする。相手の脳味噌が勝手な認知をするのが嬉しいのかね。「君はすごいね」「君は優れてるね」誰にそんなこと言われて嬉しいのかね。
人間は一人で死んでいくのだ。その過程を他人からつべこべ言われたくない。
電車の中で中学の同級生に会ってしまった。相手はにこにこと親しげに話しかけてくる。何十年も会ってないのに、よく親しげにできるな。嫌悪感と憎しみが湧いてくる。そしてそういう自分がとても嫌だ。
血飛沫、肉と骨が砕ける。僕は意識を失う。
3歳くらいの自分が見える。河原でタンポポの綿毛を一生懸命吹いている。息が上手く吹けず「ふー」と口で言っている。涙がこぼれる。自分はいつからこんなおかしな人間になってしまったのだろう。3歳の僕が笑いかけてくる。僕は泣きながら頷く。僕は駆け寄る。抱きしめようとする。抱きしめた瞬間幼い僕は僕の中に溶け込んだ。僕はよろけながら川の流れに入っていく。そして流れに身を任せた。
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