第14話 うーうー

 それは幼い僕の目の前に突然現れる。「うーうー」と大きな音を発していた。

 形は色々だった。石油ストーブのようだったり、焼き芋を半分に切ったようだったり。

 石油ストーブみたいな奴は、突然目の前の床に現れ赤くピカピカ光り、うーうーと音を出して、ぱっと消える。

 「うーうーが来たよ」僕は母親に向かって叫ぶ。母は困ったような、嫌そうな、それでも少し笑って「そうかい」という。

 僕は、うーうーが来たので満足だった。

 焼き芋を半分に切ったようなうーうーは、二階の窓の外に現れる。切られた断面は黄色でそこがピカピカ光ってうーうーと音を出してこちらの方はしゅっと上空に消える。

 両方が一緒に現れることはない。

 僕は「うーうー」と言って走り回るのが好きだった。うーうー言いながらブランコ乗ったり、ジャングルジム登ったりした。周りの子達はちょっと気味悪そうだったような気がする。

 家の2階の窓から夕焼けの空を見ていた。幽かにうーうーという声がする。胸がどきどきしてきた。「うーうーがいる!」僕は空に目を巡らせてうーうーを探した。姿は見えない。でもうーうーという声がするのは間違いない。僕は一生懸命探した。

 すると、僕は空に浮いていた。体の中からうーうーという声がしている。僕は焼き芋型のうーうーだ。家が小さくなっていく。

 日が沈む方向に煙突が三本立っている。僕はそこに行くことにした。うーうーと声を響かせて。

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