第8話 過去七

 俺達は遊びに行く予定を立てた。初めて俺から誘った。ただ英二と盛り上がりたくて、食事会でもしようかと考えている。待ち合わせ場所を決めて合流する予定だ。


 俺は心が浮き足立っていた。受験に合格し、しかも英二とまた一緒に通えるのだと。一緒の大学に行くことを諦めていたから尚更だ。東大に合格しただけでは、きっとこんなに喜びはしなかった。大学は通過点でしかない、ただ、そんな風につまらない解釈をしていたに違いない。


 俺を変えてくれたのは英二だ。英二といることで、俺は変われた。これからも変わっていける。まだ関係が続く限り……。


『時間か……』


 支度を済ませ、戸締まりをしてから出掛けた。アイツは目立つから来ればすぐ分かるだろう。待ち合わせ時間まで余裕がある。俺は楽しみで仕方がなかった。


 キキィーーーーーーッ!!!


 遠くで耳障りな車のブレーキ音が聞こえた。タイヤの磨り減る音。その後に何かがぶつかった音。


 ドクン……ドクン……


 胸騒ぎがした。胸が痛むくらい心臓が速く鼓動している。俺は夢中で駆けていた。待ち合わせ場所へ。


『はぁ、はぁ、はぁ……っ、は……ぁ……ーーーー』


『~~~~ッ!? キャーーーーッ!!!』


『救急車だ! 救急車呼んで!!』


『意識は!?』


『ちち、血がっ、血が出てる!! 止血しなきゃ!!』






 ーーーーーーなんだ、コレは。

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