第2話 過去一

『二番、小田切おだぎり 英二えいじ


『はーい』


 中学二年でクラス替えをし、俺の前の席に座る彼は初めて見る顔だった。


『三番、柏木 陵』


『はい』


 担任が出席をとっていると、前にいる彼が振り向いて話しかけてくる。


『よろしくなー! 柏木!』


『あ、ああ……よろしく』


 第一印象は、明るい奴だと思った。しかしそれはあくまで第一印象。印象は変わるものだ。


 クラス替えをしたというのに、彼はあっという間にクラスの人気者になっていた。立ち回りの上手い奴なんだと印象が根付く。


 きっとそれは自分には無いモノだったから、客観的に見て羨ましかったのだろう。 俺は人付き合いが苦手だった。そんな俺にもしょっちゅう話しかけてきた。


『柏木、ここってこれでいいんだよな?』


 数学の教科書を開いて、解いた問題を見せてきた。回答もあってる。解き方も完璧。


 ………本当に良く出来る奴なんだ。


 俺はほんの少しだけ回答の仕方のアドバイスをした。そうしたら、彼は嬉しそうに笑う。


『へぇ~、やっぱり柏木に聞くと分かりやすいわ。教え方上手いよな』


 そんな風に誉められると悪い気はしなかった。不思議と嫌味はない。ただ爽やかなんだと思った。

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