囚われた親友に

月嶺コロナ

第1話 振り返り

「ねぇねぇ! あの人カッコよくない?」


「確かに! チョーイケメンじゃん!」


「あんたら知らないの? 柏木かしわぎ りょうさん。社内一のイケメンよ」


「へぇー。あんなカッコイイ彼氏がいたら幸せだろうな~」


「じゃあ狙ってみたら?」


「ムリムリ。ハードル高すぎでしょ! 男版高嶺の花って感じだし」


「あはは! 言えてるー」


「………」



 こっちにはその会話が駄々漏れなんだが……。


 柏木 陵。三十五歳の独身。一流企業と呼ばれる会社に勤めるサラリーマンだ。俺は若い頃から一流を目指して勉強してここまで辿り着いた。今も会社では上司から高い評価を頂いている。同僚や周りの行員からも慕われて、充実したベストワーク生活だと思う。


 だが、全てが上手くいっていたわけじゃない。今は仕事を評価して下さる立場にある。けれど学生の頃は、ただ勉強ばかりしていたからか、周りの視線は痛いものだった。


 子供は残酷だ……。いつまでが子供かなんて抽象的だけれど、自分を客観的に見ることの出来ない輩はまだ子供だと俺は思う。そんなことを考えると、俺は歪んだ大人に育ったんだなと思い知らされる。


 つまらない学生生活にも楽しみがあった。ただ一つ。……いや……ただ一人。俺の中で唯一無二の友達、親友がいた。


 彼の名はーー。


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