(参加作品その8)書くひと(青い向日葵様)
書くひと
処女作のミステリーがベストセラーになった新人作家は、次回作へのプレッシャーや諸々のストレスから引きこもり状態になってしまい、行きつけの喫茶店にも暫く顔を出していない。
一方、駅前の喫茶店では、密かに憧れていたお客様がぱったりと来なくなって寂しい思いをしているウエイトレスが居た。
そしてある日、このままではどうにもならないと思い切って外出した作家のもとに、一通の手紙が届いていた。自宅のポストを見てすぐに家に引き返すのでは出掛けたことにならないと思った彼は久しぶりに駅前の喫茶店へ行く。
手紙には美しい文字で作家への思い遣りに満ちた文章が書かれており、驚くべきことに、作品の続編を書いたので読んでみてほしいと、URLが添えられていた。
持ってきたノートパソコンで早速、記載された文書を開くと、それは続編と題した見事な作品だった。
これは、……売れる!
嫉妬すら感じないほど秀逸な続編に引き込まれた作家は、差出人の女性は誰なのか、彼女に会ってみたいと思った。
やがて、いくつかの遣り取りを経て、ウエイトレスが手紙の差出人であったと判明する。
彼女の強い希望で、作家本人が書いたものとして、続編を発表することになった。ゴーストライターの誕生である。
作品へのシンパシーは理解するが、作家自身への個人的な思慕に戸惑いを覚えつつも、ウエイトレスの健気な生き様に好感を抱くうち、作家は突然の病に倒れる。喫茶店で発作に見舞われた彼に付き添って、ウエイトレスは救急車に乗り、病院で意識が戻るまで静かに傍に居た。
目覚めた時、作家は彼女の愛に気づいていた。
その後、二人は夫婦となり約60年連れ添ったのち、歳上の作家はある日、眠るように息を引き取った。
最終話URL
https://kakuyomu.jp/works/1177354054884815618/episodes/1177354054884890306
企画参加時点での最終話PV:27
(私からの一言)
いただいた「これまでのあらすじ」のラストに『眠るように息を引き取った』と書かれているように、最終回は、男性主人公の死後となっています。
いきなり彼の遺言から始まり、それに対する女性主人公の反応がメイン。彼女の回想のような感じで、彼の最期も詳しく描かれているのですが、わずか数行のその場面も素敵です。
いや、そこだけではなく、全体的に「素敵な文章で綴られた」という言葉がピッタリの最終回。こういうものが文学的余韻なのではないか、と思ってしまいました(私は『文学』を語れるほど、その方面の読書量は多くないのですが)。
三つの文からなるラストのひとかたまりも、とても美しいです。そこには『すべての始まり』という言葉もあり、物語の締め括りとしてバッチリ収まると同時にここから開始してもおかしくないような……。この企画的には、読者に「最初から読んでみたい」と思わせるような最終回だと感じました。
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