みかん狩り 8

「村上、労働組合の執行部に入ったらどうだい?」


「いや、僕は青年婦人部で十分だよ」


「しかし、村上がこれからの組合を背負って立つべきだと思うよ」


「村上さんには好きな人がいるのよ」


突然、小山さんが言った。


「小山さん、何を言うんだい?」


「私、知ってるのよ」


「何を?」


「村上さんの恋人」


「誰だい?」


武田が尋ねた。


「言ってもいい?」


「だめだよ」


僕は小山さんの手を離すと、皆の集まっている所へ逃げるようにして行った。

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