みかん狩り 4

僕達は会社が退けると、近くの寺へ行き、寺の境内で抱擁した。


ある時は建築中の建物の中に入った。


ある時は小学校の校舎だった。


茨木市には若い二人が利用するホテルはなかった。


僕達の交際は会社では秘密にしていた。


二人とも周囲に気づかれないように細心の注意を払っていた。


別にそんなに秘密にする必要はなかったのだが、僕はその時、会社の同じ職場の人妻と不倫をしていたので、その人に気づかれないようにと思ったのだ。


バスは何とか一台確保することが出来た。


しかもバスガイドつきである。


日曜日の朝、バスは和歌山へ向けて出発した。


72人乗りのバスに70人という大盛況であった。


「村上さんのおかげね」


とし美はバスの中で、僕に言った。


「そんなことはないよ。運が良かっただけさ」


「そう?」

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