第13話 カメトモ寝返り
「どっこらしょ」
裂け目を渡り再びきました。異世界。動物図鑑に載っていないだろう奇抜な生き物が慌てて逃げていく。
「ったくまた来ちまったぜ。昨日必死こいて元の世界に戻ったつうのによー。おい!」
そう言うとトモは掴んでいる右手を上げダウメを前に放り投げた。
パラパラと悲しき髪と共にゲフンっと声を上げて地面に横たわった。
「ああ……ワシの頭皮が」
「元からスカスカだったから気にすんな」
「ええい!うるさい!まだ残っていれば髪を結って増毛ができるんだよ!」
ダウメはぐわっと立ち上がり文句を言う。傷だらけであれだけボコボコにされたのに元気だね。
「ワシの体は頑丈だからな!そこらのガキになんぞに負けたりは……ぎょべぇ」
トモにめり込むまで顔面を踏まれるダウメ。すかさずゲシゲシと押し込んでいく!ようしゃない!
「ほう!おもしれえだったらまだまだボコボコにできんな!」
「痛みはあるよ!痛みはあるよ!ごめんなさい!すいませんでした!」
蹴られながら謝罪するのね。トモはダウメに足を乗せたまま会話を続ける。
「んで。人質を匿ってる塔はどこだ。全然見えねえぞ」
「あーはい。次元の裂け目が少しずれたんです。あそこですあそこでかい塔ですでかい塔!」
ダウメは必至に短い手で後ろを指さした。
「でっかい塔?……どああああ!」
そういいながら顔を向けるとなんとびっくりとってもでかい真っ黒な塔が建っていた!高い!
「たっけえ!いつの間に作ったんだよ!」
「ククク!ロウドが一日でやってくれたぞ!といってもワシが与える能力は非常識以上だ。世界の原理や摂理を覆す不正のズル。あいつらはチートとか言っておるが……ぐべぇ」
「セツコだとかセツミだがチーズだが知らねえがいちいち威張るんじゃねーよ。ハゲ」
「誰がハゲ…ぐべぇ」
「うるせえ。ハゲ」
メリメリと顔面に足を埋め込んでいく。人間あそこまでめり込めるのかー
「んなわけないだろ…フィクションじゃなかったら顔面沈没だ」
そうですね。
「んであそこに大吾と……よくわかんねえ女がいるんだな」
「はいそうですー」
「うっし!んじゃ気合入れて行くか」
トモはダウメから足を放すと再び髪を掴んだ。
「おい!カメ行くぞ」
とカメに声をかけると。カメはボーっと崖の向こうにある景色を見つめていた。
「おい聞いてんのか?つうかなんでお前までついて……」
「中世ヨーロッパみたいな街並み。見たことない生物……向こうにはドラゴンみたいなのが飛んでるのが見える!ふはーあっちには…」
すると突然カメは拳を上に上げた。
「っやったー!異世界だぁ!夢じゃない!本当にあの異世界に来たんだー!」
涙を流しながらぴょんぴょん飛び跳ねた!
「あいつ……何喜んでるんだ?薬でもキメたかのようにてめえまさかあいつに薬でも仕込んだのか?」
トモが掴みながら訪ねるとダウメは頷いた。
「いやあいつの反応ワシの部下と一緒だ……きっと現実の世界でいいことないんだろうなー」
「はーん」
しばらく喜んでるカメをトモとダウメは可哀そうな人を見る眼で見つめていた。
♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢
そしてやってきました塔の目の前!近くで見るとやっぱり高ーい。
「入り口は……あれだな」
入り口とどでかく書かれた看板が建てられている。非常に分かりやすい。
「ちょっと兄貴。入り口からはいるんですかい?流石に罠のような気がしますが」
少し落ち着いたカメがトモに助言をする。
「ああ。大丈夫大丈夫。こいつを盾にすっから何かあったらこいつが真っ先におっちぬだろ」
「ええ……おまえ本当に主人公かよ」
私もそう思う。
「まぁ落ち着け。確かにワシを盾にするという手は有効かもしれん」
「うっせえ盾だな」
「ごべぇ!」
バゴンっと音をたててダウメの顔面を塔に打ち付けた。
「ちょ……塔につく前にワシがあの世に昇ってしまう」
「おう。いけ果てしなく続く階段をな」
ご愛読ありがとうございました。トモ君の次の活躍にご期待ください!
「勝手に打ち切りにするな」
すいません。するとカメがトモの前に頭を下げた。
「兄貴ここは僕に任せてくださいっす」
「んだ。カメ随分というな」
「それはもちろん異世界にきたからには僕も生まれ変わったようにハツラツになりますよ!」
「はーん」
「ささ。僕に任せて」
「あ。おい」
そういいながらカメはダウメを掴むと、ダウメはこれを待っていたかのようにニヤリと笑った!
「よっしゃ!今じゃかめ!」
「はい!」
そう言うと一気にトモの手からダウメを奪い取り足早と岩段に上がった。
「あっ!おい!カメお前何やってんだ」
「兄貴。すいませっす」
そう言うとカメは笑った。
「実は自分ダウメに言われて能力をもらったんす」
「はぁ?」
トモが首をかしげると満足げにダウメは笑った。
「がはっは!油断したなートモチン」
「ぶっ殺すぞ」
「トモさん」
覇気に根負けするダウメ。不良は怖いもんねしょうがないね。
「こやつはワシの天才的説得により今日から我が部下になったんだ。一日で友を二人失うとは日頃の行いが悪い奴だーがははー。あっギャグじゃないぞトモだけにぷくく!」
「くどいっつうかカメは自称舎弟だ」
「またまた強がっちゃってー」
ダウメは愉快にスキップする。
「まぁ能力を配り過ぎて今いる奴らよりは俄然どこにでもいる奴にすね毛が生えた程度だが。逃げるだけなら十分よー。あっ↓に能力値のせておくぞ。ワシって読者の事を考えてるー」
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名前: カメ
レベル: 1
種族: 低人間
属性: オタク
スキル: いやなことから逃げるのが得意
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「あっあれ!僕なんか自分のプロフィールっぽいんすけど!?名前もカメだし!スキルっていうか得意なかとじゃないですか!でもゲームみたいにステータスが見える!すげえ!」
カメが驚いた。
「ここに来る奴よくこれ見て驚くよなー。お前たちの世界でもステータスを見ることが出来るだろ?
しかも自分で書くらしいじゃないか。客観的に出るこれよりもそっちの方がいいんじゃ?」
こちらの世界のステータスは結構重いんですよ。
「ほーん。よくわからんな。そんな奴がこっちに来ると実力上がるって考える奴は脳に欠陥あるか疑うわ実際ワシの部下そんな奴ばかりだし」
「ちょ!僕は普通っすよ!男のロマンすよ!」
カメはムッとした表情を浮かべる。
「というか本当に約束通り僕を強くしてくれるんっすよね」
「ん?……ああうんうん。わしの能力が戻ったらすぐにやってやろう」
本当に?
「本当は適当なこと言って追い出してやろうとおもうとるわ。これ以上サイコパスはいらん……まぁつうことで!ワシはお前の間の手から逃れることにしたぞ!」
しかしトモは白けた顔をしながら耳をほじった。
「ギャーギャーうっせえな。どうせ俺にまたぶっ飛ばされんだからよ」
「ええい!今回は大丈夫なの!塔よ開け!」
するとトモの前にある塔の扉が開いた!薄暗い広場の奥に螺旋状の階段がある!
「ぎゃーはっは!トモよ!ワシはロウドと共に待っているぞ!悔しかったらここまで上がっておいーで!」
ダウメは尻をたたきながら笑う。
「良し雑兵見習いカメよ!ロウドのところまで連れて行け!」
「がっ合点!兄貴済まねえっす!」
カメは頭を下げいつの間にあいた塔の穴に走っていってしまった。穴は綺麗に閉じている。ご都合の穴!
カメよ!何故トモを裏切ったのだ!
「いや!裏切っていないっす。確かに僕に能力をくれるといった時は心が揺らぎそうでしたけど本当の理由はスパイっす!僕がこうやって敵の内側に入りこみうまく頑張って人質の女の子や大吾先輩を助けるつもりなんす!できれば兄貴と戦うロウドとかいう奴の情報も掴んでやるっす!」
なんと!カメはトモを裏切っていなかった!
「兄貴!ここは僕に任せてくださいっす!兄貴ならいつも慕う僕を信じてくれるに違いないっす!」
そう強く思うカメ!なんていい奴なんだ!いい舎弟関係じゃないか!ところでトモは?
「あの野郎。随分と舐めたことしてくれんじゃねーか!おもしれえこいつらとまとめて絞りカスになってもらうぜ!」
恐れもなく塔の中に入って行くトモ!カメ君の気持ちはトモに伝わってないぞ!どうなるカメ!
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