第9話 変わトモ早朝

朝日が昇り始め。今日もトモの一日が始まる。




「ともやー」


「とーも」




年寄りの朝が早い。おじいさんとおばあさんの声が二階に響いてきている。


その声で目が覚めるトモ。




「だりぃなー」




トモはベットにうつぶせになりながら机に置いてある時計に目を向ける。


表示されている時間は午前6時30分




「なんだよ。まだ1時間以上余裕があるじゃねーか」




そういい再び夢の世界に戻ろうと目を閉じていく




「ともやー」


「とーも」




再び声をかけられているけど大丈夫なの?




「あと一回声かけたら諦めて散歩に出かけるよ」




随分慣れているね。




「ともやー」


「とーも」




また呼んだのち階段に耳を傾けるおじいさんとおばあさん。




「ばあさん。どうやらトモはまだ寝ているみたいだな」


「本当にトモはお寝坊さんだね」


「しょうがない。散歩はワシらだけでいくかの」


「そうじゃのう。電車に乗って日光の大仏様に挨拶しようの」


「戸締り頼んだぞ」


「いってくるね」




そう言いながらおじいさんとおばあさんは外に出ていってしまった。




「今日は学校あるっつうの」




なるほど下手に出ていったら旅行に付き合わされるから降りなかったんだね。


するとトモは眠気眼でベットから起き上がると二人がいったことを確認する。




「無事に行ったな。じゃあ俺は二度寝にしけこむか。今日は重役出勤って奴だな」




そう言うと再びベットに倒れこむトモ。遅刻する気満々だね。




「あっとそう言えば、俺前回異世界ってところに行ったんだったか?」




蛍光灯に右手を伸ばしてボーと見つめるトモ。




「あれは夢だったのか?現実感なさ過ぎて未だに受け入れがたいが…」




トモは右手を握り目を瞑り意識を指先全体に集中させた。




「どうやったっけ。あー火をイメージすればいいのか!ファイヤー!……なんつって


そんな非現実的なことあるわけねえよな」




ふざけ半分で念じて右手を開くトモが目を開くと特に何もない……ってあれ


なんか煙が出ているよ!




「はっ?何言って……どあああ!でが燃えてるぅ!」




トモは慌てて手を握るとそれに合わせるように拳全体に火が回り始めた。




「ぐあああ!あつくねえ!っていうかどうなってんだ」




慌てて辺りを見渡し何とか火を消そうとするもドンドン火が強くなっている。




「やべえ!この火何か出たがっている!」




そう言うと慌ててドアを開けると




「うおおおお!いけえええええ!」




屋根に飛び出して振りかぶって上空向けて火の玉を投げた!


火の玉は打ち上げ花火のように軌道を描いて空に舞い上がっていく。




「ふぅ。何とかなったぜ」




トモはそう言うと右手を見つめた。その手は特に焦げもなく


昨日のかすり傷が消えた綺麗な手だ。




「俺……いったいどうなっちまったんだ」




厄介なことになったトモはそう確信したのであった。




----




一方そのころ大気圏に謎の飛行物体が接近していた。




「ぎょぎょぎょ。あれが青い地球カ」


「小さく哀れな星だ」


「未だに低い文明くだらない争いをしている星」


「我らお魚星人が今日侵略してやろう」




魚みたいな飛行船に乗っている手足の生えた気持ち悪い魚。


彼らは魚星人という宇宙人だ。本日をもって地球侵略を


狙い我らが地球に近づいているのだ。




「このボタンを押したら奴らは終わりだ」


「人間人体破壊ボタン!」


「このボタンを押せば地球にいるすべての人間は内部から破壊され全滅する!」


「我が先祖お魚を食う野蛮人め!これで終わりだ!」




このまま地球は終わってしまうのか!その時!




「艦魚!突然地球から謎の物体がとんできます!」


「なんぎょと!どういうことだ」


「ぎょぎょぎょ!我らの作戦に気付いた地球人の攻撃が!」


「馬鹿な!我らの魚術力よりもはるかに低いクソ文明が」


「強制年金そして謎の引き上げ!生きているだけで税金とるとか」


「そんな魚になれないクソ人類が!」




やめてくれ!これ以上何もしゃべらないでくれ!すると火の玉は


魚船に見事にぶち当たる!瞬く間に火が船を火だるまにする。




「ぎょぎょええええ!」


「蒸し焼きになる」


「炙り焼きになる」


「燻製になる」




そして魚船は焦げ焦げになり砕けそして海に落下した。


青い地球と人類は知らぬ間に救われた。




関係ない話だがその日




『衝撃!空から焼き魚が降ってくる!ハリケーンの影響か!


近隣住民美味しくいただく!』




記事がネットニュースに載り


その後『舞え焼き魚の宇宙魚ーフライグリルエイリアン』


という名曲が生まれた。




----


話題を戻そう


ここは主人公トモがいる女の子要素皆無で寂しい男子校


午前中の授業が終わり生徒達は自由にお昼を過ごしている。


そしていつもトモ達がつるむ屋上では




「「異世界!?」」




親友の大吾と後輩のカメの声が重なる。




「ああ、そうだ」




なるほど自分が異世界に言ったことを二人に話したんだね。


ドヤ顔で言っているトモ、そんなトモを二人は驚いた顔で見つめ


そして顔を見合わせ




「ぶっはーはっはあははははは!いっ異世界って」


「いーひひひひひ」




二人は顎が外れるくらいの勢いで大笑い。




「おまえ。今日久しぶりに遅刻しないで来たと思ったら。まだ寝ぼけているのかよ」


「もしかして僕の昨日言った話真に受けちゃいました」




そりゃ当然の反応と言えばそうだろうね。




「本当だ。嘘ついてねえ」




腕を組んでトモ、君はいつも堂々としているね




「またまたー。そんな兄貴は確かに目つきが悪くて女性受けしないからって


現実逃避するにはまだ早いっすよ。あっそれともな〇うデビューしたんで


リアルな反応が見たいとかっすか?だったら今度自分の本を貸しましょうか?


ハーレムとかいいっすよ。もう女のことか萌え萌えキュンキュンすよ」


「わけわからねえ。早口いうんじゃね」


「あっ自分でよければ。ポイントとかブックマつけますよ。タイトル教えてくださいっす」




スマホをいじりだすカメ。その謎の馴れ馴れしさに青筋を立てまくるトモ。




「まさか。お前がそんな趣味に目覚めるなんてな。長年つるんでいる俺の


目をもってしても見切ることができなかった」


「いや、何も見切れてねえよ。節穴だぞそれ」


「安心しろお前がどんな趣味を持とうといつも通りに接してやるよ」




そう言いながら就活の本を開き見る大吾。


その内容はアニメやゲーム、同人販売の求人。




「いやいつも通りじゃねえよ。俺の将来そっちに差し向けようとしてるぞ」




トモのツッコミを聞かずに二人は各々盛り上がりを見せる。




「兄貴どこっすか?最近だと目立つタイトルじゃないと探しにくいすよ」


「あー。色々あんだなーこんなによ。とりあえずこんなのどうだ」




二人はトモを慰めているのか馬鹿にしているのか。


プッツン。切れた!決定的何かがトモの何かが切れた!




「フン」以外に切れても冷静なトモは先ほどのやり方で


手に火を作るとそれを迷わず!鼻くそを飛ばすよに!二人に放り投げた!




「どあ!きたねえ!」




慣れているのか大吾は咄嗟に体を傾け回避する流石トモの友達。


そして火は舎弟カメのもとに




「へ?」やっと彼が気づくと同時に火の玉がトンとスマホに当たると


ボウっと盛大な文字が分かるくらいの擬音とともに!火柱が上がった!




「もえる!もえる!」




カメの服は燃え盛る。




「「やべえ死んだかも」」




トモと大吾は思った。いや助けようよ!


火柱が外から見てもわかるくらい上がっている。


目撃者多数!しかしここに住む住民は皆気にしない。




「なんだ。いつものことか」




これで済まされる世界観!




そうこうくだらない事をしているうちに気付くと火が消えていた。




「うわああああああ……ってあれ」




カメはゴロゴロと転がるも火が消えていることに気付く。




「何いきなり火炎瓶投げているんすか!おかげで焼死になる所だったんすよ!


僕を異世界転生させようとしたんすか!そんなの現実には無理っすからね!」


「おいトモそれどんなマジックだ」




カメは目を瞑り勇気を振り絞りトモに文句を言うも


大吾が驚いた声が聞こえる。


目をゆっくり開くとトモの手にはメラメラと火が燃えていた。




「ふぅやっと使いこなせそうだぜ」




グッと手を握ると火は沈下して何もなくなった。そして見せつけるよに


また手を開き火をともす。




「いや、頭の悪いトモがこんなマジック使えるはずがねえ!」


「確かにっす。ということは…まさか本当に」




余計な言葉に青筋を立てるトモだったが二人が納得しそうな感じに


落ち着いて再び言った。




「わかっただろう!俺は異世界に行った」

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