第7話 少女トモ神殿

トモの口から血が滴り落ちる




「いてえな!この暴力女。今回一番の痛さだぞ!」


「うるさいわね!あんたが悪いんでしょ!ヘンテコな


カッコしちゃって」


「ああ!この学ランは俺の青春の証だ!馬鹿にすんじゃね!」




少女はトモを離すとずべっと地面と顔面がキスをする。




「ともかく。あんたには私の荷車を弁償してもらいますからね!」


「だから俺のせいじゃ…」


「ええい!言い訳をするな。男のくせに」




少女は威圧するように足で地面を叩く。


なんだか強気な女の子だねー




「だめだ。話が通用しない」




太陽が沈みかけてもうすぐ夜になる




「こうなったらもう頼むしかねえ!」


「何をぶつぶついってるのよ!ほら早く行くわよ


とりあえず憲兵に突き出すから!」




少女は馬を引き連れてトモに近づいた。




「なぁ。荷車を勝手に拝借したのは悪かった」


「はぁ?いきなりなによ」




少女は首をかしげる。




「じつはこれには深い理由があるんだ」


「そんなもの憲兵に連れだした後聞くわよ!」




少女はロープを取り出してトモに近づいた。




「荷車を盗んだのはあそこの神殿に行かなきゃならなかったからだ


頼む協力してくれ!」


「ここにきて変な事言わないでよ!」




這いつくばりながら訴えかけるトモの気迫に少女はたじろいだ。




「あそこに着いたらもう何も言わない。お前の言う通り


弁償でもなんでもする!だから頼む俺をあの神殿まで連れてってくれ」


「はぁ!ふざけないでよ!なんで私があんたを神殿に届けないと


いけないのよ」




するとトモは這いつくばり少女に近づく




「たのむ……俺をあの神殿に。俺の家族が待って…いる」




ガクリとトモはその場で気絶した。




「ちょっと……いったいどうなってるのよ。家族って」




少女突然のことで混乱しどうしようか迷っている。




「どうしよう。こいつを憲兵に突き出すのはいいんだけど


でも…」




少女はトモの言葉を思い出す。


どうするのかね




「うるさいわね!せかさないでよ!…とりあえず連れていく」




するとお人よしの少女はトモを担ぐと馬の背に乗せた。


結構力つよいね




「鍛えてますから」




その後少女はトモの後ろに乗ると馬の手綱を引き


馬を走らせ神殿に向かった。




「あーなんかわるいなー」


「振り落とされたくなかったら黙れ。それで家族の話は本当なの」


「嘘じゃね。服装みてわかるだろ。俺はこの世界の住人じゃないだよ


ダウメって野郎に無理やり連れてこられたんだ」


「ダウメ…あああの変なおじさん」


「夢は王国を乗っ取ることだってよ」


「うわーいたい」


「そう。いたい野郎なんだ。だから弁償はあのおじさんに言ってくれ」


「弁償はともかく…まぁ家族の為っていうなら協力するわ


家族が大事な気持ちわかるし」


「あと好きなおん……」


「なんかいった」


「…なにも」




トモは思わず口を押えた。馬は神殿に一直線に向かっていく。




そして街の神殿では丸い四次元空間みたいな穴の前で


ロングコートを着た男が二人会話していた。




「そろそろ〇〇のアニメ二期始まられねーかな」


「いやーそれ円盤の売り上げ悪かったから無理っしょ」


「いやいや原作はうれたじゃん」


「でっ出たそういう奴ー」


「おん。煽ってんのか」


「うっは。マジになってる。勝負する気か」


「お前なんかバイブレーション剣の錆にしてくれる」




くだらない内容で二人の男が取っ組み合いを始めるも


何かに気づいた。




「あっれ。なんかすごい早さで近づいてないか」


「たしかに。俺のサーチに引っかかったぞ。なんだ」




神殿の入り口に注目する二人の男。




「なっ何するんですか」




すると少女の叫び声。転移者の男二人は顔を見合わせ


現場に向かった。




神殿の裏。人通りがない所。




「やっやめてください。何するんですか」


「ゲヘヘ。あきらめて俺を楽しませな」




手に持っているナイフを舐めながら女性に詰め寄るトモ


それ主人公の顔じゃないよ。




「ねえ。そこの人」


「ああ!なんだ!」




極悪非道の顔は皆さんで想像してほしい


トモが振り向くと転生者の二人が無気力に立っている。




「いやいや。話しかけてるのはあんたじゃなくて後ろの女性」


「あーそこのお嬢さんお困りですか」




頭を二人共かきながら問いかける




「はっはい困ってます助けてください……この人達なんで


同じ格好してるんだろう」




少女は少し引きながら助けを求めた。




「おうおうテンメ!正義のヒーロ気取りかー痛い目


見ねえとわかんねーのか」




割とそのキャラはまってるねトモ君。




「はぁーお兄さんさーそういうのはダサいって」


「君そこを動かないでね」




二人はつかつかと歩いてくる




「調子にのってんじゃねーぞ」




トモは腕を振り上げ無気力な男共に突っ込んでいく




「はぁ…しょうがない」




男はトモの拳をスッとかわす。




「うわ。おっそ」


「フェイントに決まってんだろうが!素人!」




回避しようと体を反らした男の髪の毛を強引に掴むトモ




「ぎゃぁぁぁぁぁぁ。いたい」


「ひっいじめっ子」




そのまま髪を引っ張ったままもう一人の男にぶん投げた。




「ぎゃひいい」




二人の頭がぶつかりその場で倒れ気絶した。


一部が禿げている。




「うえ。髪がベタベタしてる」




手に残っている髪を払い落すと少女に振り向いた




「おい。これでいいぞ。こいつらを問い詰めれば


お前の荷車好きなだけ作ってくれるぞ」


「えっええ。わたしは貴方たちのおかげで逃げられたって


いえばいいのよね」




トモは頷いて見せる。あっそういう作戦だったんだね


少女はその惨状にすごいドン引きしてるけど




「さーて出口はどこだ」




神殿の中に入っていくトモ。そこには


ドンドン小さくなっている空間。




「どああ!やべええ」




急いで祭壇の上を走り空間の前に来る。




「あっ結構余裕あったわ」




そういい歩き目の間にたどり着く




「おい。ここに入れば無事元の世界だろうな」




そうだよ




「うっしじゃあサッサと帰るか」


「あんた一体誰と話してるの」




少女は馬と共に神殿にはいってくる。




「お前には世話になったな」




振り向き際に声をかける。




「えっええ。まぁ家族と元気で」


「おう。お前も達者でな」




そう言うと穴の中に入った。


するとトモが入ったことを確認すると同時に穴は閉じた。


残された少女は啞然とする。




「これは悪い夢に違いない。とりあえず荷車を何とかしなきゃ


ギャラもらって帰ろー」




たくましい彼女また出番があるかどうかそれはわからない


トモは現代に帰ったんだから

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