第10話 滅びの歌
金太の大冒険。
ご存知の方もいらっしゃるかもしれない。
金太という変哲もない少年が大冒険をする、という大したこともない歌だ。
俺は心を込めて歌った。
「ある〜ひ金太が歩いていると、美しいお姫様が逃げてきた」
この辺りまではきっと八神部長もにこにこしていたんじゃないかな。
「お願い! 金太守って! 金太守って、金太守って、きんたまもってぇぇぇぇ」
もうそれからは覚えていない。
ただひたすら無心で叫んだ。もう俺は既に死んでいた、魂は靖国にいる。
「フト見るとマスカットの木がはえている〜金太はナイフで切ったとさ。金太マスカットナイフで切る、金太マスカットナイフで切る、きんたますかっとナイフできるぅ〜〜〜」
不思議と恐怖はなかった。
覚悟を決めると、人間こうなるのだろうか。
でもそんな真実、もういらない。なぜなら俺はもう終わりだからだ。
「金太待つ神田、金太待つ神田、きんたまつかんだぁ〜〜〜!
ご存知金太の大冒険、これから先はどうなるか、またの機会をごひいきに、それではみなさんさようなら〜」
歌った。歌いきった。
父さん、母さん、見ているか、俺はやったよ、最後まで歌いきった。
もうどうにでもなれ、なんでも良い。
不思議と爽快感すら漂っていた。
人間死ぬ前はこんな感じなのかもしれない。
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