第8話 戦士の覚悟

 時は既に深夜0時。

 このまま続ければ、さらなる死人が出るのは間違いない。


 俺は少し考えた。

 そして一つの結論にたどり着いた。


 さりげなくタブレット端末を持つと、曲を探し始めた。

 その曲は意外と簡単に見つかった。

 あとはそれを押すだけ。


 それをじっと見ている俺に気づいた早乙女が、横からその曲名を確認した。

そして目を大きく見開く。部長は歌に夢中で気づいていない。


「お前……正気か? 終わるぞ、何もかも。今までお前が積み上げてきたもの全てが!」


 分かってる、そんなこと言われなくたって痛いほど承知している。

 でも仕方ない、やるしかないんだ。世界を救えるのは俺しかいない。


「早乙女。お前も知っているだろう。カラオケ・オブ・ザ・デッドが一度だけ早期に終了した事があるのを。今や伝説となったあの下大迫がこの歌を歌って、緊急解散となった……」

「待て、阿久津。早まるな、お前にだってまだ未来はある。下大迫みたいに破滅したいのか?」

「もういいんだ。これ以上仲間が苦しむのは見たくない」


 指の先にあるのは「送信」と書かれた文字。

 そこに指が触れた瞬間、ピッ、という音とともに「送信完了しました!」

と楽しげな文字が浮かんだ。


 ——終わった、これで。何もかも——


 俺は周りの仲間を見渡した。みんな良く頑張った、ここまで。

 みんなのためなら俺は……死ねる。


 ——これで良かったんだよな——


 俺は自分にそう言い聞かせた。

 テレビの画面に送信された内容が反映される。

 たった今、登録が完了された歌が1秒だけ表示された、それを見て俺は確かに自分が選んだ曲が予約されたのを確認した。


 終わらせよう、この破滅の歌で。もう何もかも。

 終焉の時がすぐそこまで迫っていた。




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