@AkatsukiShigetsu

僕は夢を見ていたのかもしれない。学校から帰ってソファーに座ってふとそう思った。

僕には当然ながら世の中の『本質』なんてものはわからない。当然今生きているこの世界が本物かどうかわかるわけがない。


僕は目を覚ました。ソファーの上に眠っていた。さっき考えていたのは夢だったのか…。時間は午前1時…暇だ。いや、暇ではない。宿題をしないと明日も学校だ。昨日も先生に怒られたばかりだ。宿題をしないとまた下校時間が遅くなる、いや、先生、親にもっと迷惑をかけてしまう。

親は夜勤でほとんど顔を合わせないのになぜこうも僕の行動に干渉してくるのか。昼はほとんど寝ているのにどうして呼び出されるといつも飛んでくるのか。もはや申し訳ないを超えて面倒くさい。ああ、また眠くなってきた。ベットに向かった時、なにかに躓いて転んだ。手首に何かが刺さったような感触がある。しばらくは痛みに悶えていたが、だんだんと眠気が勝ってきた。さっきの痛みも夢なのか?だんだんと痛みが消え、そんなことを思った。瞼が重い…。


目を覚ますとそこはベットの上だった。しかし家のベットではない。周りには沢山の花が置いてある。起き上がろうとしたが、体が動かない。側では母が僕の手を握って泣いている。周りには親族が大勢集まっている。どういう状況なのか…。そしてベットの上に何か蓋のようなものを乗せられた。蓋を閉められる直前の母の顔を見て、もうすぐこの世が終わるのか錯覚するようだった。ベットはそのまま運ばれる。車に乗せられ、しばらくしてある場所にたどり着いた。そこで僕がどんな状況に置かれているのかわかった。気づいても僕は動じなかった、いや、体が動かなかったからなのかもしれない。どちらにせよ僕は冷静だった。まもなく燃やされるこの体に最後の別れを言った。もちろん心の中で。箱に火がついた。熱くはない。苦しくも悲しくもない。生まれ変わったらもっといい世界にいるだろう、そう思った。意識が薄らいでいく…。


目を覚ますとそこは自分の席。

「授業が終わったら先生のところに来なさい!」

怒鳴られた。

さっきのは夢だったのか…。それとも前世の記憶なのか…。もしかしたらずっとこんなことを繰り返しているのかもしれない。この世界ももしかしたら夢なのか…。僕は夢を見ているのかもしれない。




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