5.下着は手洗い? 洗濯機洗い?
「すまない、少しいいだろうか?」
「さっき来たばっかじゃねぇか──、ってなんつー格好してんだぁぁぁぁ!!」
四王天は全裸にバスタオル1枚巻いただけの姿で俺の部屋に居た。さすがにこの格好は恥ずかしいのか、顔は真っ赤に染まり、首から肩まで赤くなっている。あぁぁ、もう、嫌な予感しかしない。
「洗濯機から出てきた衣服が濡れていてな……、着れなかったのだ」
「もう最後の一着だったのかよ!!」
「おぉ、このような衣服は初めてだ。着心地が良い物だな……」
俺が渡した服を身に着け、四王天は満足気だ。
四王天に渡したのは、適当なTシャツに、パジャマに使っているスウェット上下、もちろん今使ってるやつじゃなく、洗い替え用だ。体格がそれほど違わないためか、サイズは丁度良さそうだ。だがヤバい、出るとこ引っ込むところが強調されて、破壊力がとんでもない。その上、あの衣服の中は今、ノーブラノーパン。そう、
落ち着け、冷静になれ、
「せ、洗濯終わったら、ちゃんと干せ。洗濯機は洗うところまでしかしないからな……」
「そうか、いろいろと複雑な手順があるのだな……、それで、その……」
四王天は何か言いづらそうにモジモジしている。まだ何かあるらしい。
「洗濯した衣服は、どこに干せばいいのだろうか?」
「うん、大体予想はしてた、たぶんそんなことだと思ってた」
本日二度目の女子部屋。
「ふんぬぅぅぅぅぅ!!」
そこで、俺は全身の力をこめ、衣装棚を移動させていた。なぜならば、洗濯物をベランダに干そうにも、ベランダへ出入りするための窓は全て何かの棚によって塞がれていたからだ。俺の使っている金属パイプ製の棚と違い、意匠も凝った豪華な木製の棚は重量も重い。
床を傷つけないように気を付けつつ、棚の向きを変えることで辛うじてベランダへ出るための通路を確保した。
ベランダには据え付けの物干し竿はあったが、それだけだ。当然ハンガーも無ければ洗濯ばさみも無い。致し方なく持参したハンガー類を用い、四王天の衣服を干していく……
「なんか、俺んちの備品がどんどん目減りしていく……」
「す、すまない……」
四王天は俺の部屋に不法侵入する奴だが、ここは申し訳なく思ってはいるらしい。やや落ち込みつつも、俺の動きを見て勉強しようとしているようだ。ちょっとズレたところもあるけど、たぶん本質的には真面目な奴なのだろう。
「こ、これは……!?」
衣類の中から、光沢のある水色の生地に黒いレースで彩られた小さな布が発掘された。
「ぱん……」
そして当然相方とも言うべき"上"を覆うモノもあるわけで
──上下揃いの下着!!
この逡巡で俺は一瞬手を止めた。俺の静止に四王天も気が付いたらしい。
「なっ! そ、それは!! あ、あとは私がやる!」
手に持っていた布は目にもとまらぬ早業で取り上げられ、俺はベランダから室内へと強制的に引きずり戻された。焦りと恥ずかしさからか、四王天は激しく赤面し、目が泳いでいた。
「あ、あとは自分で出来るから……、すまなかった、今日はその、いろいろ助かった」
「あ、うん、わかった、じゃあな……」
お互い微妙な空気を醸しつつ、俺は自分の部屋へ戻った。
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