第2話 ネットから現実へ
—1—
「ねえ見た? 昨日のミソラチャンネルの動画」
「あっ、見た見た。商品紹介系でしょ」
「
「あっ、今見たら急上昇7位だって!」
「凄っ、最近チャンネル登録者数も50万人超えたみたいだし、やっぱり広告収入とかそれなりに入ってるのかな?」
「あんたのバイト代よりは貰ってるだろうね」
「あはは、それは間違いない」
「でさ、話変わるけど——」
今日の授業も全て終わり、掃除の準備をしていると同じ班の女子3人組がミソラチャンネルのことを話題に出していた。
直接話し掛けてくれればいいのに遠慮しているのか近寄りがたいのか、最後まで私に声が掛かることは無かった。
彼女たちの会話にも出ていたように昨日の動画は急上昇7位まで上がっていた。再生回数も45万回を超えた。
商品紹介系の動画でここまで話題に上がるのは結構珍しい方だと思う。更新時間ギリギリまで編集した甲斐があった。
力を入れた動画に結果が出ると素直に嬉しい。
次回の動画は年に2回の質問コーナーを募集する動画にしようかな。
SNSで質問を募集して、寄せられた質問の中からいくつか答えるというもの。質問コーナーの動画は比較的数字が伸びやすい。
数字をさらに伸ばすコツとしては、
私は次の企画を考えながら掃除を終わらせて真っ直ぐ家に帰った。
—2—
『はい、というわけで次回の動画は質問コーナーになります! ミソラに訊いてみたい質問があるよという人は私のSNSにどしどし送ってね。動画の概要欄にアカウント載せてるからそこからジャンプしてください! それではまた次回の動画でお会いしましょう! 以上、ミソラチャンネルでした! バイバイ』
今日の動画も無事公開。
動画の公開時間に合わせてSNSでも質問募集の呟きを投稿した。
早速、SNSに質問が届き始めている。
【部活は何入ってるの?】
【月収いくら?】
【最近ハマっていることは?】
【ミソラちゃん好きです! 付き合ってください】
【好きなタイプは?】
【経験人数は何人?】
【身長と体重教えて!】
【ズバリ何カップ?】
質問を募集すると毎回同じような内容のものが送られてくる。
大体が答えられない過激な質問ばかりなので、上手くかわすかどうかが動画配信者の腕の見せ所だ。
まあ、質問を募集する期間として3日間設けてるし、まだまだ面白い質問が来るだろう。
と、ここでスマホが連続で振動した。
「豚の勇者……」
【忠告したのに懲りずに質問コーナーか】
【
【そっちがその気ならこっちももう手加減はしない】
昨日、脅迫文を送ってきた『豚の勇者』から3件のコメントが届いた。
「気持ち悪っ」
私は迷わずアカウント名『豚の勇者』をブロックした。これでもう同じ人物からコメントが届くことは無い。
【ブロックとは酷いじゃないか。俺はいつでも君を見ている。もう逃げることはできないよ】
「はっ? なんなの! 嫌がらせにも限度ってものがあるでしょ」
ブロックしたアカウントとは別のアカウント、豚の勇者2というアカウントからコメントが届いた。
逃げることはできないとか不気味過ぎて夏なのに寒気がする。
【ほらっ、今も実空、君の家の外にいるよ】
「嘘でしょ……」
スマホを机の上に置き、恐る恐るカーテンを摘まんだ。少しだけ開き、片目で外を確認する。
薄暗くてよく見えないけれど、小太りの男が私の部屋がある2階を見上げていた。手に握られているスマホの光が男のズボンを照らしていた。
「どうやって調べたんだよ。警察に通報した方がいいかな? でもお父さんとお母さんに迷惑掛けちゃう」
心臓の鼓動が早く強くなっていく。
生まれてからこれだけの恐怖を体験したことは無い。
【今日は初日だからこのくらいにしておくよ。明日から楽しみだね実空。おやすみ】
机の上で光ったスマホの画面を覗き込む。
手汗が凄い。滝のようだ。
視線を外に戻すと男は家の前から消えていた。
どうやら本当に帰ったみたいだ。
明日から私はどうなってしまうのだろうか。
この狂気的なストーカーと私はどう戦えばいいのだろうか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます