Ѕtαγ at the labo wїth hapϸiness foreνer





 うわ、びっくりした。また君か。



 うん、じゃあ、まあ……ゆっくりしなよ。今、ちょうどよく博士が不在でね。お昼ご飯のあとって眠くなるよね。え? 博士はどこにいったかって……あれ、どこだっけ。聞いたはずなんだけど、ど忘れしたみたいだ。ほら、ものを食べた後って、消化するのに忙しくて……脳の動きが鈍くなるから。


 ねえ、君って一体どこから来たの?


 科学者の端くれとして、気にせずにはいられないよねぇ。そもそも僕は君が人間であるかどうかでさえ疑っているんだよ。君って本当に生きてるのか、とかね。だって、君ってそこに現れたっきり、一言も喋ろうとしないし。博士のことについてでも話す? 僕は沈黙が苦手なんだ。



 博士は……うーん……



 いや、自分から言っておいてどうかと思うけど、話すことがない。ひとつも。こう言ったらきっと君は「僕があまりにも他人に無関心だから紹介の一つも思いつかないんだ」と思うかもしれないけど、そうじゃない。僕はこれでも色んなコミュニティに属してきたし、そのたびにうまくやってきた。他人の特徴や自慢、コンプレックス……つまり僕は、褒められたら嬉しいことやそうでないことなんかは、そいつと数分も喋っていれば簡単に把握することができる。でも博士はそうじゃない。彼はいつも、ただ「そこにいる」。


 君にわかるかな。

 これがどれだけ幸福なことか。


 博士が戻ってくるまでの間、少しそのことについてでも、考えてみればいい。お茶でも飲むかい? それともコーヒー? 上等な茶葉もコーヒー豆も、スティックシュガーもミルクも、ここには全部揃ってる。君は好きなものを選ぶことができるよ。さあ、どうする?




 あ、そうか……。



















 君は、何もできないんだったね。

 


 

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Dr. Kremplsetzer’s laboratory 名取 @sweepblack3

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